テキスト1971
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家といけばな専渓のページに掲載した「金属酒瓶」も最近いろいろな用事があって東京へ行くことが多くなった。私は東京の町があまり好きでないので、宿泊の場合は横浜まで行き、ニューグランドホテルにとまることにしている。前の通りにそうて山下公園、すぐ目のさきに港が見え、外国航路の船がみえて、京都とは全然感覚の異った風景が展開して楽しい。元町通に竹中という外国美術品を扱う店がある。横浜へ行った時は時間のゆるすかぎり、この店に立ちょつて買いものをすることにしている。この店の主人は趣味的な人で、主としてタイ、マレー、香港、インド方面へ旅行して、珍らしい道具類や雑貨類を蒐集して、店にならべてある。そんな風変りな店であるがここの店で、最近買ったのだが印度の什器らしい味わいがあつて、中々面白い。きのう、河原町の書店で印度に関するガイドの本「インド」照夫氏著ーーを買つてきて、その紹介文を読んだ。インドは広大な領土に三億六千万の人口のある大きな国家である。仏教国といわれるだけあって、仏教に関する歴史と、仏陀寺院の旧跡、僧院と仏像、これに関係のある壮麗な宗教建築のカラー写真をみて、仏教の発生した印度という国の悠久の歴史と、深い国民性を感じたのであった。ガンジス川、その上流のジャムナ川、ゴダーヴァリ川の沐浴風景や農民の低い水準の生活、衛生医療の不完備な状態、その他のひろい国民ー|上野化活についての報告をみると、印度という国が近代国家として改編されるには、大変な努力を要するだろうと思われるのである。私達に興味をもたれるのは、印度の宗教に関係のある伝統的な器物、生活用具などの中に、美術的な味わいのあるもの、こんな雑具の中から私達のいけばなに使うことのできる器物、そんなものに特に関心をもたれるのである。写真の酒瓶は、インドの上流階級の什器らしいが、銅と錫で仕上げ、彫刻に竜紋や人体などが描かれていて、中々泣琴華な感じをもつている。美しいサリーを着た侍女が運んで来る情景が想像されて楽しい。(いけばな)この酒病に「朱色のボケ」「ボインセチア」の二種の花を活けた。花器の感じに通じるような花を選んだのだが、2種の花が赤色調なので、銀色、銅色の感じによく調和している。なんとなく異同趣味の花といえる。ポインセンチアはメキシコから中央アメリカヘかけて原産の花だがクリスマスのころ、葉先が真紅に色づいて美しい(和名狸々木)インド人は赤色が好きらしい。国土が赤い土なので、それが国民性となつているのかも知れない。女の衣服も赤一色というのが多いし、兵隊の服も赤、建築物にも赤色、赤いターバン、女性のみけんにつけた赤い円、トラックや力車のボディなども赤色が多いという。熱帯の風土と赤色との調和を考えた習慣だろう。10 (生活用具を利用して)インドの寺院(専渓模写)インドの洒瓶に花を活ける

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