テキスト1971
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.會.・‘.ヽヽ '/ /,ヽ '+,.? ー 、I’今日は9月15日。秋びよりのしずかな日である。部屋の窓ぎわにコスモスの花を小さい花瓶に活けて、その向つの庭には、夏のなごりのむくげの終りの花が樹の枝の先までいつぱい花を咲かせており、それにすがりつくように捨て育ちの朝顔の紫と紅が、気ままにのびて花を咲かせている。夏と秋の中問の季節の九月である。いけばなに使う材料にも、夏の残りの花と秋のはじめの花との入りまじった中に、すすきの尾花、萩、しおん、ひまわり、けいとうの紅など、秋草という言葉にふさわしい九月の花を活けることになるのだが、ことしは白花のりんどうの美しいものが花屋に多くみられるようになり、手にふれる花と葉もなんとなくさわやかな初秋の感覚が心にしみるこのごろである。この号のテキストに活けた花も、そんな感じの花が多いのだが、ここに掲載の「尾ばな、ストレチア、てっせん」三種の瓶花も、九月の花らしい味わいをもった花といえる。ストレチアのオレンジ色、テッセンの白花と濃い緑の葉はわびしい形だけれど、すすきの尾花とともに季節泌の深い取り合せといえるだろう。花器は一扁平な形の白地に紅色の図案のある花瓶。下向きにダリアの葉を描いた画は、いけばなの花葉の色との調和もよく、テッセンの葉が二、三枚、花瓶の前へ垂れ下つて、その下地に花器の図案の渋い紅色の図案が見えている。上のストレチアから下のテッセンの葉まで、さらに陶器の絵のダリアの葉も、このいけばなの中に―つになつて、形と色の構成を作つている。花瓶の絵と活ける花との調和、こんな考え方もいけばなの中の―つの意匠といえる。花瓶の絵はある場合にはいけばなに複雑な感じをおこさせることもあるのだが、全体的にいつて陶画自体の優れたもの、図案の場合はそのアイデア技巧の儀れたもの、これでないと花は引きたたない。そんな意味で絵のある花瓶は陶器のよさとともに図柄をよくみつめることが大切である。毎月1回発行桑原専慶流編梵発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専疫流家元1971年10月発行絵のある花瓶専渓No. 100 •• いけばな

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