テキスト1971
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まき(槙)の木は生花の初歩の花古によく使われる材料である。まきにはその他、らかんまき、こうやまきなどといわれる秤類があるが、生花にはほとんどこの槙が使われる。なんとなく仏くさい感じで、色は濃い緑色の葉、平凡な材料である。色彩の美しさはないが、形を作る造形的な而白さ、作り上げる技巧的な興味、そんなところに古い生花の面がある。外国の人は日本の生花のこんな点に特に注目するようだが、これは多くは異閃情銘を味う意味において興味をもつのだろう。花のない材料だけに、きびしい造形的な技巧のいる材料といえる。c 右勝手行(普通)⑪左勝手副流しの花形の花形c行(ぎよう)の形というのは、流儀を代表する花形ということである。真行草という言葉がある。ちょうど書道のように行書というのが一ばん書きやすい使用に便利な書体だが、生花でもこの意味と同じように、まるみのある適度の花形が「行の形」であって、活けやすい形でもあるし、流儀の花形(伝統生花には流儀を代表する花形がある)として、これが代表ということになる。cの写真の生花がそれなのだが、生花の基本型ということになる。真、副、胴、留、控の五つが基本枝。真かこい、みこし、胴のしずみ、留の一⑪しずみ等が補助枝ということになる。(写真では胴の出が見にくい)足もとを美しく揃えることは、生花の技巧の一ばん大切なところであり、むづかしいところでもある。生花の花器については特に注意がいる。仏統的な花器からはなれて、しかも生花に調和する花器を選びたい。古きよきものは残し、新しい考え方をとり入れようとする、その態度が大切である。Cの花型は右勝手である。花型は、反対の向きの左勝手である。左勝手の形だがこれは行の形ではない。真を軽く作り、副を右方へ長くさし出した形、この場合は中央の枝(胴)も長く出さないで力を抜く。左方の留と控もやや小さく軽く作る。いわゆる横姿の形である。右勝手行の形cと比較してみるとよくわかると思う。この花器も普通の牛花の花器としては、変つていると思う。壷の中へ銅の中筒を入れ、それへくばり木をかけている。色彩的には単純だが花器によくのる花形であることが必要である。水ぎわ(足もと)は10センチ程度がひともとに揃つて美しく整つていることが、どの場合でも必要である。この花器は黄土色の陶器で、壷の口辺もしつかりして生花の器として適している。.. Dの3 . •••• ••••••...

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