テキスト1970
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この号では民芸の道具を使って花を活けたのだが、大ざつばな解説ながら、民芸品と称する土地土地の趣味的な器物について、理解をもつていただけたかと思う。美しい現代的な陶器や、明るい色彩の容器の類も新鮮な美しさを感じるが、一方また、こんな民芸のよさと生活の中の美をみつけだすことも、教養の―つであろうと思っ゜民芸品というと常識として、草深い農家の実用的な品ものの様に考えられるが、新しく作られる実用器具の中にも美しい形のもの、味わいのあるものがあり、また、外国の実用道具の中にも美しいものが多い。中国、タイ、印度などの日用器具の中には、木彫りのもの、金属製品など、生活用具の中に美しいものが随分多い。最近、印度産の道具をいろいろ買ったが、その国民性と作品の技術にすばらしいものがある。そして、その実際用途と生活ぶりを想像して、いろいろ教えられるところが多い。花花器材器材花花R黒く褐色の使いなれた篭、これは股家で使う背負(せおい)篭、その他の雑具を入れるために使う篭であろう。篭の内部に小さい紐とおしの鉄の輪がついている。これに紐をつけて背負う様になつている。12ページの高山の朝市の写真の中に老人の背負つているのが、これと同じものである。横40センチ、高さ30センチ程度の深みのあるこの篭は、相当つかいなれた年代のさびが見えて、民芸の味わいが深い。黒褐色のこの篭に竹の落しを入れて、すすきテッセンの白花を活けた。黒の上に白花緑葉のテッセンの花が美しくさえてみえる。.. ナこ。Rこの壷は黄色に図案のある支那壺である。中国のどこで作られるのかわかりにくいのだが、中華料理に使うビータソという卵をこの中へ入れて送つてくる。また中囚道具屋へも小ものの雑具類を入れて送つてくる、いわば荷造り用の容器なのである。コンテナー時代に昔のままの荷送り用の壷を作って、一回ごとに捨ててしまう中国人の感覚は、合理主義の日本人にはわかりにくいのだが、これで結構、商売になるのに違いない。たこ壷と同じ様な意味をもつこの壷を中庭に岡いて、ムクゲの淡紅の花、ヤシの葉の緑を1枚、つつこみ挿しに入れて、庭の装飾にし@ 支那壷ヤヽンの葉ムクゲR すすきてっ.せん農家の背負篭10

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