テキスト1970
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cつり花生にしたこの篭は、京都の民芸屋で買った篭である。農家に使う腰さげの篭だと思う。どこかの地方の種入れ篭を模して作ったものと考えられるが、はつきりしない。口もとの直径15センチほどの小さい篭で、小型の入れものだが、がっちりして丈夫な篭である。器として使うことになる。花器につかうのには当然、つり花花はムベの蔓3本、淡紫色の洋種野菊を3本とり合せて、軽やかな垂体の花を入れた。山にあるツルの実ものムベを左右に2本、から垂れさせて下部で見える様に挿してある。この後部の1本の入れ方が工夫のあるところで、つり花生の場合、効果的な用い方である。・置き花器の場合でも背高い器には後方に垂れさせる枝を入れるのも面白い。c ⑪花器に使っているのは「蛸壷」である。岡山の海岸で買つてきた、みやげものの壷で、げてもの壷の最1本は後方も一般的なものである。素焼きのこの壷を海に沈めておき、蛸の入ったころ引上げて捕獲するために使う。蛸はこんな壷の中へ入りこむ習性をもつているのだろう。まことに気の毒な習性といえる。大量に製造される壷の中には、焼きの面白いものが偶然みつかることがある。かきがらのついた様なのもあるがこれは趣味がよくない。形としては平凡だが、花によっては案外よく調和することがある。カルカヤ、テッセン、マンサクの3種を活けた。カルカヤが若々しく細いので効果がないのだが、テッセン、マンサクの部分の下部が、たっぶりと横に張つて形がよい。⑪ c 花器腰さげ篭花材むべアスター⑪ 花器たこ壷花材カルカヤまんさくテッセン,

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