テキスト1970
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いけばなの材料と花器について、思いつくままにいろいろなお話を書いてみましよう。絵画でも彫刻、陶器など、どの場合もまず第一に必要なことは材料です。よい作品を作るには材料がよくないと俊れたものが作れません。一般的にはいえませんが作家としては、まず材料を選択することが第一の条件ということになります。ことに、いけばなの場合は自然の植物をそのまま素材とするのですから、よい材料をもつかどうかによって、作品に影靱することが多いわけです。これは当然なことで、みなさんも充分おわかりのことですいけばなの材料というと、植物材料の花や木だけのことを考えるのですが、これだけではなくて、それらを入れる花器も材料の中に入るのです。花器が材料というとおかしい様に思生ますが、よく考えれば花器があつてのいけばな、花材があってのいけばなですから、当然きりはなすことのできない関係にあるもので活ける人にとつては、花も花器もいけばなを作るための材料ということになります。そこで、この二つについてお話をしたいのですが、ここでは、むつかしいお話はさておいて、極めて一般的な実際的なお話をしてみようと息います。です。おけいこの度ごとの材料だから、みなさんはお桔古に使う花をどうしてお買いになりますか、先生の方でまとめて用意してある場合もあるし、自分で好みの材料を花屋で買つてお稽古にもつて行く場合もあるでしよう。お稽古の花といえども、その材料によっては、いけばなのでき上りのよしあしに深い関係があって中々考えねばならないことです。目分で選択する場合は、選択することが、すでに勉強の一段階といえますし、その配合、趣味、色彩についての勉強になります。また、先生が考えて逝択される場合には、以上の様な条件を先生の方で考えて取材されることになり、習う人達は、稽古日ごとにかわる材料の配合をみて、教えられるところが多いと思います。いちばんよくないことは花屋まかにせして、花屋の都合のよい様な材料を配逹させることそのたびごとに、こちらで選択することは中々大変なことですから、つい向うまかせになることが多いのですが、出来ることなれば選択は厳重に考えて、練習のために効果のある材料配合をしたいものです。花を買うのは中々むづかしいものでして、つい花犀まかせになりやすいのですが、それでは自主的な選択はできませんし、個性的な花を活けることは不可能です。ご参考のために桑原胚古場の状態をお話します。桔古日は土昭日の午後より夜へかけてですが、その日の早朝の花市場でおきまりの花屋が仕入れたものの中から、屋は高級品を常に仕入れています)適当な材料を小蜀ずつ、その日にあるものを全部、見本にもつてこさせます。20稲程度の見本をいつもとり寄せることになります。その中から二糾み、三組みほど取合せて、それぞれ何人分ということにして、その後、二時間ほどして、一人分ずつ新聞紙に巻いて納品します。したがつて、前回の花とさしあわない様に、趣味のよいもの、練習のために効果のあるもの、傾向の変ったもの、色彩の配合、その他いろいろ条件にあうものを選定するわけです。市場からすぐ運ぶ新鮮な花ですから、そんな点でも気持ちのよいものが活けられるわけです。値段は四〇0円ということなっています。京都ではこの程度で、かなりよい花が入ります。おけいこの花は理想的に考えますと、稽古日から次の稔古日までもつ花、というのが理想ですが、こ.のごろから夏季へかけては三日間程度がいいところではないかと思つています。しかし、先生としては荏古の花には充分、責任をもたねばなりません。瓶花盛花は配合が生命ですし、生花の場合は、ことに練習上効呆のあるものでなくては、完全な稽古ができないものです。従って、時として材料が予想の様に取合せがよくなかつたりすることがあつて、稽古時間が始つてから急にとり替えたりしま(私の方の花す。材料の思わしくない桔古日はこちらが、げつそりして常に倍して疲労します。気持ちの悪い稽古日となつてどのくらい婢な思いをすることでしよう。そんな次第ですから、花屋にとつてはいちばん難かしい先生だと思っています。花屋に調子をあわせていてはよい花が活けられないからです。花の材料については面売人以上によく知つている私ですから、納品する花屋さんも大変だろう、と心の底では、私の気ままを自認しております。全固的にみて桑原専慶のいけ花を習つておられる人達は、幾万に達していますから、た叫巡その人逹が練習用の花材を使われることになります。材料の選び方は様々だと思いますが、いけばな材料はただ花の形を作るものではなくて、稽古日ごとの材料の選択によって、習得進歩の程度にも影響があるものですから、材料の選択はきびしく、よく考えることが必要です。以上は稽古の材料についてのお話ですが、それ以外にいろいろな場合のいけばながあります。例えば特別の会場の花、涵店の花、その他の用途が多いわけです。ことにいけばな辰の場合などは、材料が生命といえるほど直要な性質をもつてきますから、その選択にも大変な努力がいるものです。これも、私の場合を御参考に杏いておきます。花屋にもいろいろ系統専門があって、陪古花を納めることを専業の様にしている店もあり、花展の材料を専門に集めている花屋もあります。したがつてその用途に応じて適当な礼屋を選定することが大切なのです。私の場合はこれを三つにわけています。桔古花を納めさせる店。珍らしい花を常に集めている店(写真材料に適当な材料を貿う店)花展の際の大作品や特殊な材料を集めている店。この3種の系統の花屋で必要な川途に応じて材料を集めさせるわけです。また、京都では二店、大阪では二店、東京では一店と、特別の契約をしていますし、それらはどれもいちばん高級な花尻ですから、どんなむつかしい材料でも、高山の木も熱帯植物も注文次第、集めてくれるわけです。また、京都、池田、宝塚方面の温室には直接、買いつけのできるようにしてありますから、どんな大作の材料でも手に入れることができます。さきにお話しましたように、いけばなは佃よりも材料が大切ですから、これを手に入れる方法をしつかり確保していることか、花道家して最も叩災なことなのです。1次号ヘー(専渓)材料①。11

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