テキスト1970
42/136

//晩春より初夏ヘさくらが終ると若葉の季節である。五月に入ると花の色彩の華やかさよりも、自然の若葉のすがすがしさに心をひかれるようになる。いわゆる新緑の季節である。山つつじ、しやくなげ、はないかだ、つくばねの様な山木の花が終ると、山の樹木は緑色をまして、水辺の緑の木、緑の木蔭をたのしむ季節に入る。いけばな材料にも、緑の木のノふ鶏冠杉⑧ 好ましい様になる。葉を活けることが多くなり、草花の材料も色彩の淡泊なものが五刀の若葉は、まだ柔かくてしおれるものが多い。草花も若々しくて水揚に注意を要する季節だが、これが六月に入ると、花葉もかたまりしつかりとした草木の花の類が多くなり、暑気が強くなっているのに、日持ちがよくなるのは、材料の体質がしつかりとかたまつてくるIil係である。ここに掲載した3作の瓶花は初夏らしい材料を選んで活けたのだが、色彩的にも淡泊なものと、山木を主材に使って五月の季節感を出した作品である。このごろは5月にも日持ちのよい草花が多く出廻るようになったが、十数年以前までは、五月の花は日持ちの悪いものが大部分と観念しておった時期があった。最近は材料の質もよくなり水揚げのしつかりした材料が多い。2 山木の季節R⑧c R シャクナゲショウブスイートサルタン山木の緑山梨スカシユリ

元のページ  ../index.html#42

このブックを見る