テキスト1970
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山市では、まださむざむとして、梅と桃と桜が一時に咲くという、友人よりの花だよりをききながら、ようやくあわただしいこの二、三カ月をふり返りながら、久々にテキストのための花を活ける。うす紫の大輪の菊5本、留には「アリウム」を2本そえて、生花の伝統の形の中に、少し明るい調子を加えて、花器も褐色に緑を帯びたカッ。フ別の陶器の花瓶に活ける。生花には伝統的な格調の中に、高い品格と、高雅なもち味のそなわっ今flは五月のはじめ、長野県の利ていることが、必製な条件である。最近、闊芸柏物の栽焙が進歩して、年ごとに花の季節を越えて、意外な季節に意外な花を活けることが出米るようになったが、生花のもつ技術の美しさ、気品を諄菫する粘神には変りはない。この花器には銅のくばりは前後にかけた「真のくばり木」を使っている。頁、真かこい、副、胴、控と菊を入れ、留ヘアリウムを2本、これは曲線のあるものを選んで、苓の線を少しもつらせてさした。美しく揃えないところに雅趣111筒を入れて、を出そうと考えたのだが、結果的には、このいけばなの最も大切な味わいを作ることが出来たと思つている。大輪菊とアリウムの生花は取合せとしても変つているが、私の現代生花に対する考え方は、伝統粕神を失なうことなく、適確な技術の上に、ほのぽのとした明るさを加えようと、そんな欲望を常にもつているのだが、この作品はそんな意味で見ていただければ幸せである。泰然として、悠然として花堺におさまった生花の美、伝統の花の中に日本的な格調を見ることの出来るいけばなである。毎月1回発行桑原専慶流編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専渓桑原専慶流家元せいか1970年5月発行いけばな伝統生花の美No. 83

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