テキスト1970
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(寺田清左衛門作立花)三00年以前のいけばなと、今日花材のいけばなを比較してみるのだから、いろいろな意味で研究的な問題が多い。立花に用いている材料を考えても興味があり、花器についてもことに深い感銘をうける。皆さんもそんな点をよくみつめて、この絵を通じて江戸初期のいけばなについて考えるように、また、この絵にある立花の作者は桑原専悶流の、その時代の名手の人逹の作品であり、桑原冨春軒家.工の最も側近の高弟の人達の作品でもあつて、そんな点にも先衆の力作に敬意を表したい。さて、2ページに収霰したのは、寺田清左衛門作「行の花の内、中流立」の立花である。立花には真行草の花形があって、その中に行の花形はいちばん風雅な花形、変化に宮んだ花形である。行の形は「のきじん」といつて真(しん)が平がなの「く」の字の様に曲のある形のものをいい、その行の花型のうちに更に、(行の冥)(行の行)(行の草)という様に三部にわかれている。さらに「行の行」の中に8体の特殊の他かんぞう、桔梗、松紫苑の葉、小菊、そな花形が定まつている。請正心立流枝持立中流枝立二つ真立左流枝立水際除立内副立請流枝立さらに「行の草」というのがあるわけで、実に大変なものである。2ページの木版画は、以上の八休のうち「中流枝立」ちゅうながしだて、という花型であって、写真の花型の中段から左の下へ流れる様に出してある松の枝の形、これが中流し、又は中段流しという形である。行中行の花製であるから、全体に柔かみのある形につくり上げてあり、その中に八つの形をきめて、それぞれ特徴のある花形を作り上げている。この作品は、夏季七、八月のころの作品である。花器は銅器の重量感のある立派な花器である。江戸時代には中固銅器の影靭をうけて優れた作品が作られておった様である。立花のどの作品をみても、形づくる枝葉花のその形もさることながら、その花枝によって作られる空間、すきあい、前後の深さ、そんな点に特に注意されていることが狸解される。空間の重要さ、突間という意味にはいろいろの解釈があるが、ここでは、枝と枝、葉と花などによつて作られる「すきま」の形、これが重要なのであつて、よって花形が構成されるといつても過言ではないほど、屯汲なポイントである。「すきま」にR (瓶花)花材タニワタリ、カユウ紅オトメツバキ守田清左衛門作(中流枝立)の立花を写して瓶花を活けた。カユウの白、ツバキの紅、タニワタリの緑の簗の三種の配合である。花器は黄土色の壷で口もとが広い。花器の中に剣山を入れて活ける。右図の立花と同じ形を写す考え方はあるのだが、立花にとらわれないように、瓶花はあくまで瓶花としての目然のひろやかさのある様に、これは大切なことで、瓶花盛花が生花の様に固くなったり、まして、立花を写してなどという考え方をもつと、形が窮屈になって、瓶花としての自然観貨の感じをこわすことになる。のびのびとして目然趣味の中に、花形の考え方を、古典から借りようとするのだから、作るのも中々むづかしい。立花図にある「かんぞうの花、右方の紫苑の葉」これに対してカユウの花5本をもつて形を作った。(立花)中央のかんぞうの花、上方左へのびたキキヨウの花に対して、瓶花の方ではタニワタリの葉で形どり、(立花)左方長く出た松に対して、紅オトメツバキを入れた。タニワタリの低く前へ出してある葉、椿のたっぷりとした用い方、これは瓶花としての技巧的な使い方といえる。現代花として3 (瓶花)タニワタリカユウ紅オトメツバキ@ →

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