テキスト1970
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軽い意匠的な花ですから、飾る場所も食卓の上、居間の戸棚、テレビの上、お花です。普通のいけばなの少しいたんだものを、花だけ切って短かく使ったら、もう一度利用できることにもなりましよう。その他自由にどこへでもおけるc cこの写真の右の方は、陶器のお醤油入れ、又はソース入れ。明るい褐色の手付きの10センチ程度の小さいものです。赤いカーネーションを1本みじかく切つてさしました。緑の短かい葉を少しみせて、ほんとにそのままさしたのです。花を短かくさした、というところが考案でしよう。左の低いのは紙製の「おつまみ入れ」です。淡いコバルト色のくまどりがあつて朝顔の花の様な形です。紙ですから軽やかな感じですが、これに赤いカーネーションの花を首だけ一輪、そつとおきました。少しななめに格好を考えて。私⑪Dの写真の右は、ミルク入れです。沈んだ黄色の陶器で高さ8センチ程度、この容器は少し落着いた感じなので、花も上品な感じの白い花の単辮小菊を1本入れました。花器の黄色に対して、菊の濃い緑の葉がみずみずしい感じです。左に低くみえるのは、白い色の小皿(直径8センチほど)です。これに淡紅色のさくら草を1本、首みじかく切ってそつと置きました。お皿には水を入れませんので、花を水にさっとくぐらせて、そのままお皿の上へおきます。それから、ふと考えてみたのですけれど、こんな趣味のお花や、考え方は、女性の方には身近かでもあるし、共鳴される方が多いと思いますが、男性の方、ことに年令層によっては、どうもねえ、といった人達が多いのではないでしようか、ちょっと面白そうだけれど、そんなのは苦手でねえと、おつしやる方もあるでしよう。ご婦人の方でも、お生花でないとねえ、ちゃんときまった盛花や瓶花でないとねえ、とおつしやる方もあるでしよう。しかし、花はどんな場所へでも活けられるし、どんな方法でも飾れるという意味から、こんな即興的な花も面白いものです。(専渓)はすでにおじいちゃんですけれど、古いお花も活けますし、こんな可愛いいお花も作ります。美しいものを作るのには年令の差別はないと思います。ついでにいわしていただけば、私の書く文章でも、いろいろ調子をかえて、強くもやさしくも書きます。文章は言葉ですから、当然なのですけれど、それと同じ考え方で、伝統的なものにはしつかりとした本質的な理解をもち、今日的な生活には今日を理解することが大切ですし、ことにいけばなには、その考え方が必要であるわけです。(専渓)`"'9,' ヽ⑪ 11

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