テキスト1970
19/136

c独柳は2月に入ると銀色の実を見せて、春らしい感じになる。この生花は1月初旬に活けたもので、いかにもさむざむとした感じだが、色彩に乏しい中に、曲線をそろえて形を作り、その造形の美しさを見るところが「生花の美」ということができる。美しい花をみるのではなく、形の美しさや、雅趣を感じるのが、生花の「内にある美しさ」である。この生花は「右勝手行の花形」であつて、真、副、胴、留、控の主枝と、それに補助枝のしんかこい、みこし、総かこい、などが入っている。⑪同じ花形に留を椿にとりかえた。真、副、胴、控、が猫柳。留に紅色の花の「おとめつばき」をつけた。あしらいをつける、根じめをつけるということになる。ふたいろざしの生花である。この場合は留だけ他の花材を使ってもよく、留、控を他の花材で作ってもよい。猫柳はためやすく曲線に美しく揃えることもむづかしいことではないが、この写真にあるように多少は匝線曲線をとりまじえて、雅趣と品格を見せるように考えるのは、生花の形に深い味わいを作ることになる。ねこやなぎいけばなでみずぎわ(水際)というのは、花器の口もと、いけばなの足もとの接触する邪分をさす。盛花瓶花でもみずぎわを美しく作るということは必要な条件なのだが、ことに伝統生花の場合は、みずぎわの技巧がよいかどうかは、一瓶の牛花の重要な条件となつている。みずぎわの技法もいろいろな方法にわかれている。木ものの足もと、草花の足もと、水草もの、太いぼくもの、細い木もの草ものの場合、みなそれぞれ異った考え方で水際を作ることになる。足もとを美しく揃えるということは、どの場合にも必要ではあるが、またそれに過ぎるといけない、という場合もある。花の自然と雅趣という別の考え方が加わるので、技巧本位では逆効果になるという場合もある。草花のみづぎわは少し低く作り軽くゆったりと仕上げるのがよい。行季柳エニシダの様な細い材料はあくまで精密に、椿、梅、桜の老幹の様な材料は自然写実風にざんぐりとした味わいをみせる様に作る。いろいろな考え方があるわけである。生花は技巧の花といわれるけれどその中に自然と風雅の味わいを加えることが必要である。3 . ........ みずぎわ•••••

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る