テキスト1970
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Rとくさ、ばらの瓶花。花器は杉の木片で作った日光桶(につこうおけ)である。この器は木薗桶、栗山価ともいわれ、もとは中部山岳地方の山家の水桶をうつして、日光や飛騨の民芸品として売つているおみやげ品である。形もよく手の形も風雅で、野草の花を活けるとよく調和する。すすき、さん菊、秋海棠、紅葉にりんどうの様な自然の花がびったりする花器であろう。夏の花器として青楓に朝顔の花、花菖蒲、かきつばた一種などこの花器を引立てるに違いない。写真の花はとくさにばらの2種を軽く挿した。中央に手があるので、その前後にわけて人れたが、手をかくさない程度にかる<人れる様に注恙した。この日光桶にうるしをかけたものがあるが、これは白木の新鮮な感じのものがよい。新しい木の香りのあるものが、この花器の味わいといえる。主として夏から秋への季節感のある花器であるから、こんな性質の花器は常に使わないで、時々、息いがけなく見る、といった調子に使うのが好ましい。サンスベリアとくさばら2作⑧濃い亦の大輪菊2本、白菊2本、サンスベリア2本の単純な感じの盛花である。菊の直立とサンスベリアの直立した個性を組み合せたのだが、また菊のしつかりとした強さと、サンスベリアの硬く弛い形の調和という点にも注意している。菊の葉の複雑な形に対して、直線のさっぱりしたサンスベリアの葉の形も花を引き立てる役目をしており、菊と洋種の葉も用い方によっては面白い味わいを出すことが出来るものである。この盛花は、前後に深く形を作ってある。前方の赤と白は前方へ強く出ており、後方の赤と白はずつと深く奥へ控えて挿してある。前後に深く空間が作られてあるので、サンスベリアの入れる場所がある。横巾のせまくて央行きの深い形、ここにこの盛花の特徴がある。見れば簡単な花であるが、その考え方、計邸の仕方に注意してほしい。テッセンに姫百合、サンキライに水仙の様な細い材料もむづかしいが、反対にこの菊とサンスベリアの様な強くて葉の群りのある材料も、特殊な技巧がいるものである。大輪菊8 立体R R @

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