テキスト1970
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cこの瓶花はヒマワリ1本に、浪い紅菊の大輪咲3本の瓶花である。花器は黒色に渋い赤色の紋様のある花瓶で、花と花器の色が大体、同色系の配合である。ぽつんと大きいかたまりの実と花が四つ並んでおり、単調な花だが、力強くはつきりとしたところに特徴があるといえる。段々に三つ並んだ菊の花、それと対象的に向い合ったヒマワリの実、普通の瓶花の考え方とは変った調子の花である。こんな形の作り方も面白い。はつきりとした個性をもつ瓶花といえるだろう。さて、実ものの材料を使って八つの瓶花盛花を活けたが、晩秋より冬期にかけては、実ものの木の材料、草の材料が多い。このごろは冬季も温家の花が自由に見られ、一月、ニ月の態冷の時期の方が派手やかな花を活けることが出来るが、温室の花のない昔は、冬季は実ものが唯一のいけばなの色どりであった。考えてみると、実ものにも多くの秤類があり、色の変化も多く、形も雅致に富むものが多い。実ものの材料を自然の野趣、被好みの材料とのみ見ないで、これに温室花などをあしらつて、明るい感覚に作り上げることも‘―つの考え方であろう。また、外国種の。ハ。ハイヤ、クンシランの実の様に、洋種の植物の実を活けることも考えたいものである。c 街路樹の葉も道路にうず高くつもる様になると、急に冬らしくなってひとしお梨さを癌じるようになる。目然のうつり変りにそうて、いけばなにも初冬の感じをあらわしたいものである。椿、水仙の早咲き、せんりようの実が色づき、南天の実も緑から赤ヘ色を染めて行く。いよいよ冬季に入つて裸木不節に人った。11月の下旬に紅葉が落ちつくして12月の自然の草木材料は少ない12月のいけばな(らぼく)の雅致を味わうが、ろうばい、冬至梅、寒ざくら、梅もどき、からみづきの様な木もの、水仙、菜種の早咲き、寒菊、おそ咲きの中菊など、派手な美しさはないが、わびしさの中に雅趣のある材料がみられる。しさ、細々とした枝に静かな雅味を感じる様な花が特微といえる。寒菊の紅葉の投入れ、椿の小品花、山木の実ものに白山菊といったような軽やかな瓶花が好ましい。水仙一種を生花に瓶花に入れるのも季節感があつてよい。冬に入ったその季節感をあらわず様な花を入れたいものである。12月のいけばなは落着きのある美5 盛花松ばらこの悩化は10月に活けたものです花器をかえれば迎春化としても適当です

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