テキスト1970
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R槙(まき)の枯実、白椿、ほととぎす三種の盛花である。槙の種類は30種もあるといわれるが、その中で私達の見なれているのは、ラカンマキとコーヤマキであろう。庭樹によく使われる木だが、高山にそびえ立つ老木には写真にみるような実が出来、それが松笠のように枯実となつて緑の葉の中に群つて立つ。この実はコーヤマキの実で緑の葉をとりのぞいて、実の群りの雅趣をみることにしたのだが、これに白椿の早咲きの花、ホトトギスの残花を添歪て盛花を作った。花器は朝鮮の民芸品で野趣の深いこの三種の花材がよく調和している。ホトトギスは褐色の花の斑点が鳥のホトトギスに似ているのでこの名があるのだが、普通一般に2種あり、その他に稲類も多く、高山植物として、ジョウロウホトトギスなどと名附けて、黄花の美しい花を咲かせるものもある。渋い感じの花であるが、咲くと小さい花が色彩的に引き立ち雅趣がある。花器のたっぷりとした感じに、どっしりとした重整感のある花、落粋きのある色調は、調和のよい配合といえる。花器を少し傾けて変化のあるように考えた。R Rナナカマドに白菊の瓶花である。ナナカマドは世界に八0種もあるといわれ、関東以西の山地に野生するのはナンキンナナカマドという種類で、生花材料に多く用いられる。その他、リクチュウナナカマド、タカネナナカマド、ミヤマナナカマド、ウラジロナナカマドなど種別が多い。10月より11月へかけて紅葉と朱色の実が美しく、一名、ミヤマナンテソともいわれている。写真の瓶花は涙紫色の広口花瓶にナナカマドの横枝を左に傾けて、太いもの細いもの2本を並行させて挿した。取合せとしては普通の配合だが、どつしりとした化沿に横はりの花型が調和していると111心う。菊の後方に朱色の実が屯なつて、菊の葉の緑と重なつて芙しい色彩である。4 R

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