テキスト1970
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c「まさき」という極めて一般的な材料である。平凡な材料であるだけにこれでよい形を作るのは却つてむづかしい。普通の形で美しく技巧的に入っておれば結構です、という程度の材料なので、これをどんなに闊子おもしろく活けるかというところに苦心した。この花形は流儀の生花としては草(そう)の花形に属する「内副、留流し」の形である。真を高く直立させ、その右側に小さい曲のある小枝を入れた。この細い枝が「うちぞえ」である。葉をかなりとり去つて軽い感じにさせて、枝の茎など見えるようにして調子をかえた。その下に立つ枝「控」は普通よりも太い枝を入れて、内副と反対の感じで入れたが、この様な考え方は生花の創作的な心のはたらきともいえるもので型の中にありながら、作者のエ夫によって単調な材料のを作るものといえる。留の批合も同じくすそもとの葉を軽くして変った調子を出そうと考えた。に、ただの美しい花形におわりやすく、見どころを作るのがむづかしい。花沿は赤褐色の索焼の陶器で、安定のある生花に適した花器である。11花に見どころとにかく、平凡な材料であるだけ⑪ ⑪この花器は辰砂(しんしや)という濃い紫紅色の壷である。耳つきの壷をすべて「耳壷」じこ、というのだが、浮たこの耳つきの形がいろいろあつて、たとえば「鯉耳」こいみみ、とか「鯛耳」たいみみ、とかその他に多くの形がある。この噺は鯛耳の壷で古風な形が牛花によく調和する。生花の花器は、戦前、盛んに使われた銅器の類、竹や木で作った花堺など生花用として形式の定つたものもあったが、今日では、そんな考えをもたないで、生花として使い得るならば、どんな秤類のtこ。 器物でも使うようにすればよい。たとえばガラス器の厚手の花器に袢閲を生花として活けるのもよいと息われるし、鉄器iLモンステに而白いと息う。花器の性門と生花の形、材料、感覚の一致することが大切なことである。⑪の生花は、すすき、白の中菊の二種である。すすきは尾花と葉のある部分とが、高く低くはなれているので、中ほどから切り、J花で花形の調子をとりながら、葉のある茎を添えるようにして活けラ3枚で生花に活けるのも憾覚的5 c

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