テキスト1970
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キーて6月より7月へかけて咲く菊は... はこのごろ菊は四季を通じてある。戦前は自然の季節にしたがつ夏菊、9月より12月まで咲くものは秋菊と常識的にきまつていたものだが、函芸の発達は花の季節感をすつかり変えてしまった。昔は、秋菊は9月に入って、滋賀県より京都へ入荷するのが秋のしりの菊で、すぐ水をさげるような質の菊だったけれど、8月の暑さがようやくしずまつて、諒風の立つ頃に、はじめて見る秋菊の香りは、しみじみと手にとつて、季節感を味わったものであった。このごろに出廻つている菊は、花も美しく、葉もよく水揚もよくこ。その上、少し曲り(まがり)のある菊があつて、生花の材料としてまことに使いやすくなった。ここに掲載した二つの菊の生花は、9月5日に活けたものだが、茎に曲があって活けやすい種類であった。生花に菊を活けるとき、ためのきかない花であるから、材料をもったとき、まず一ばんに真と留を選び出す。この二つの場所に入れる形のよいものがあれば、あとはもう楽なもので、自然、足もとの揃いもよくなる。花形は材料のくせを見てから、全体の形をきめるのが賢明で、こんな花形に活けたいと最初に自分の心をきめて、材料をそれにあてはめるような考え方は、材料に無理ができるし、結果的にみて労多くして、材料をいためることにもなり、時問もかかり息う様には中々なりにくいものである。自分の心に材料を引つばつて来ないで、材料の方へ心を持つて行く、ということになる。これが早くよい結果を作ることになる。Rの作品は左勝手の副の長い花形で「副流し」の形である。この場合は留を(左方)短かく作る。Rは右勝手の留の長い花形で「留流し」である。この菊は大分ためて曲げてある。二つの生花ともみずぎわに葉をたっぷりとつけ4 菊を活ける⑧ R

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