テキスト1969
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食器を利用してワイングラスと氷入れの手提てさげA R淡い青色の、このワイングラスは普通のものとは足が高い。東京の百貨店でみつけたこのグラスは、実用のものではなくて装飾用に作ったものらしい。倒れたら足がこわれると息われるこのガラス器は、それだけになんとなく形がすつきりしている。これを二つ並べて花を入れることにした。普通の花器ではなくて、意匠的な応用花器ということになるが、洋間の棚などにこんないけばなも楽しいものではありませんか、洋洒党の男性の喜こばれそうないけばなです。左のコッ。フにはあじさいの水色、右のコッ。フには紫紅色のダリア、その二つを結んでまとまりをつけるたB めに、シャガの葉をさしました。軽やかなアスパラカスの類を入れるのもよい調和だと思っ。ありあわせたガラス器を利用して装飾にするのも、いけばなの中の一つのやりかたといえます。こんな意匠花はいけばなの範囲から少しはなれて、即興的な花の飾り方といえましよう。R台所の棚をさがしてみたら、こんな手提の容器が出てきた。氷入れの手提である。ガラス器に金色のワクをつけた手ぎれいな感じなので、花を入れたら案外、うつるかもしれないと、デージーの白花の大輪咲きの花をさしてみた。このデージーは八重咲大輪の珍らしい品稲のもので、普通の菊とは違った派手な美しさがある。こんな変化のない同じ大きさの花は活けにくいもので、花の配列を考えるより方法がない。花を横向けて並べることも考えられるが、花器との調和を考えてみると単調に花の配列の美しさをみるのがこの材料と花器を活かすことになるだろうと、五つの花を前向きに並べることにした。いけばなの常識的な活け方を離れて、容器の外面的なきれいさに調子をあわせて、形式をはなれた装飾花、そんな考えでこれを作った。いけばなの技法から見れば幼稚とみえる挿し方だが、花と花器のもつ気軽な感じと明るい色彩を、ばつと派手やかに挿した、これもいけばなの一つであろう。8

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