テキスト1969
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cこれは12月の瓶花である。赤く染色のべにさんご(楓の一種)に、裏園から折りとった白小菊の二種。捨て育ちの小菊は地面にほうて、形も荒れた姿だが、その中に自然の野趣が感じられる。活けるのには厄介な材料だが、案外面白いかも知れないと、掲色の背高い花瓶を持ち出し、それに垂れるがままに安定させて挿してみた。左方に太い茎を一本入れ、前に小さい垂れ枝一本、右の後方に少し立ち枝のものを入れて、三つのバランスを作った。中間の位置にベにさんごの深い紅色のまつすぐな枝を五本、長短をつけて前へ傾けながら挿したが、菊の白と緑の葉、べにさんごの紅色とが色彩的にも美しく、渋い好みの中に雅趣のある瓶花となった。日常のいけ花の中に、明るい感じの花、渋い落若きのある花、大ぶりの瓶花、小品の花など、いろいろとり交えて活けることが望ましい。稽古のときには、技巧の勉強のために、大体同じ様な大きさの花形になりやすいから、同時に、いろいろな感じを変えた作品、大きいもの小さいものと、とり交えて練習する様にしたい。C り、水仙、淡紅単辮のつばき三種である。花器はうすずみ色の横長のコンポートである。百合は太く強い感じなので1本だけ使うことにし、水仙は2本、つばきは3本程度を使った。百合と水仙はまつすぐな形であるから、椿の変化のある枝振りのものを選び、これは、椿で調子をつけることにしようと考えて、まず、百合を前ヘ傾けつつ真に挿し、それに並行して後方深く水仙1本、中間に傾けて水仙1本と入れ、その後は、つばきで形をまとめることにした。椿は大きく活けても、小さく活けてもむづかしい花材である。枝振り花つきのよいものを選ぶことが先決問題であるが、その使い方、葉の分量、枝線の見せ12月10日に活けた盛花。てつぼうゆ多い。この場合は、まず、美しく咲いた一輪また、この右の枝によって、花型の空間様、すきの程度、いろいろ考えることがの開花(前方のみずぎわに垂れた花)これをどう使おうかと考えたのだが、水盤の色の上へ、うす紅の花の重なりが色彩的に美しいので、これに重点をおいて、水盤の口辺より垂れる様に位齢をすえた。右へ出す枝は、葉の少ない素朴な枝を選び、ここに渋さを見せることとし、を作る様に考えた。色のみえないのは残念だが、色彩的にも美しく、落若のある盛花となった。水仙の葉の直線とつばきの葉の曲線の対照もよく、引きしまりのない平凡なつばきだけれど、のんびりとした感じに見られると息っ゜⑪、D

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