テキスト1969
77/147

この月のテキストには「篭」のいけばなをいろいろ活けて解説することにした。篭の花器には開分、種類が多い。花器でなくとも買いものの手提篭から台所用品の篭まで、利用して花を活けてみると中々よく調和する篭がある。花器として作られた篭と、日用雑具の中から美しい感じのものを選択して花器に応用する場合、この二つがあるわけである。この号では手もとにあるいろいろな篭に花を入れてごらんに入れることにした。さて、篭として伝統の花器は「唐物篭」からものかご。これは古い中国様式のもので、精巧な美術的な作品があり、形式も定つていて大変高級な篭で、価格数万円以上もするという古美術品の篭、これが篭の中での大関クラスということになる。昔から大阪には有名な篭師が多く、こんな傾向の優れた作品を作る人が多い。いわゆる伝統の篭である。また、これらの伝統の篭の中に「肝物うつし」の篭と、文人趣味の古雅な趣味のものと大別してみることができる。いずれも篭の古典ともいわれる性格のもので、これから段々と一般的に自由な形式にうつり変つて、形も技法も軽やかな自然趣味のものが作られる様になった。これらの伝統の篭はいずれも花器として作られたもので、書院のいけばなに調和する璽厚な感じのものである。とも呼ばれているものである。幽玄索朴な趣味の茶室の花入れとして篭を使われることが多くなり、自然、簡索な感じの篭、風雅な野趣が篭の中にもとり入れられて、あみ目の荒い雅致のある篭がいろいろ作られる様になった。篭の花器に大きな変革のあったのは茶道によって影翌されたことが多いと息われる。さて、今日では篭の花器を使うことが段々少なくなっている。ほとんど陶器の壷、水盤、広口花瓶で活けることが多くなり、銅器、竹器、篭の花器は家庭の道具の中でも少なくなった様だが、篭の容器そのものは今Hの家庭で随分、いろいろな用途に用いられているので、これを花器として利用することも考えるべきだと思うのである。民芸調の篭、塗料仕上げの美しい色彩の篭、買もの絶の利用、新しく明るい趣味のものを使って、面白い変化のあるいけばなを作りたいものである。「時代篭」いけばな毎月1回発行花材タメトモユリ花器果もの盛明るい感じを盛る篭の花桑原専慶流No. 74 アリユームミリオクラタス編集発行京都市中京区六角通烏丸西入かご籠のいけばな桑原専渓桑原専慶流家元1969年7月発行

元のページ  ../index.html#77

このブックを見る