テキスト1969
65/147

温室でときどきみかけるのですが、洋花の葉ものが黄色く色づいたもの、洋種の花の枯ればな、たとえばモンステラ、アンスリームの葉の黄葉、アマリリス、クンシランの実、サボテンの花の褐色に枯れたもの、こんなものをみかけることがあります。日本種の枯花枯葉は普通にみなれて珍らしいと思いませんが、洋花の枯花枯葉は材料として中々面白いものです。ここに掲げた写真は「アンスリーム」の赤い大輪の花、褐色の枯花はジンジャーの実もの、緑の大きい葉はアンスリームの葉。この三種の配合ですが、色彩的にも美しく、褐色と赤の配合が変った感覚を出しています。洋花の枯れたものは中々手に入りにくい材料ですが、それだけに趣味の変った花が作れます。温室の枯れ葉、枯れ花などは、そうザラに見られるものではありませんが、こんな瓶花からは渋い洋画にある様な感じをうけるものです。強い色調と強い感覚、なんとなく異風な味わいの、こんな傾向の作品は、瓶花の中の特殊な作風といえましよう。明るい色彩、濃厚な色彩、軽快な線の美しさ、たっぷりとした緑の葉、その中の異国情緒、こんな感じのものが洋花に多い趣味ですが、渋い味わいというのは案外すくないものです。明快鮮麗な花が多いといえます。洋風の趣味の中に渋い味わいと、落着きのある色調、しかもその中に新しい感覚のあるもの、これがいけばなで作れたら面白いと思います。日本の花には濃厚な色彩の中にも深みのある落着きが見られます。ささゆり、おみなえしの様な軽やかな花には淡彩的な中に、静かな味ゎぃがあります。洋花の軽快さと日本花の軽快さとは、それぞれの美しさの中に系統の迩ったものがあります。うす味のスープと、おすましの吸ものの差ということができます。花を活ける私達は洋花のもち味とその特長をよく理解して、日本花にない特殊な泌じのいけばなを作る様に考えたいものです。洋花で活ける誤い味わい瓶花、これもいけばなの中の―つの趣味といえましよう。瓶花盛花は形と色調の中に、いっも創作的な工夫を忘れない様にしたいものです。毎月1回発行桑原専慶流No. 73 編集発行京都市中京区六角通烏丸西入渋い洋花の味わい桑原専渓桑原専慶流家元いけばな1969年6月発行

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る