テキスト1969
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ふくべの花器にフリーヂヤ、ポリアンサス2種を盛花にした。フリーヂヤの茎は細く長く右方へのびやかに出ている。ポリアンサスは左方高<斜に白色の花、中央低くオレンヂ色の花の配合である。ボリアンサスは鉢の花を根洗いにしてそのまま挿してある。この花器には中筒があって、それへ剣山を入れとめてある。花器の内部が黒色なので花葉が浮き立つ様に美しくみえる。日本趣味の花器だが案外、洋花が調和する。色彩的に美しい盛花である。この二つが完全に結びついて―つの別のものを作りあげている場合がある。いけばなでも、この。ヘージの写真の「ふくべの花器に洋花の盛花」の様に、古い日木趣味の花器と洋花とを調和させている、といった作品がある。先日、竹の三重切筒に洋花を5種いけて、写真を作ったのだが、さて出来上つてみると気にいらないので思い切つてとりやめたが、純粋な日本趣味と洋風の趣味との調和ということは、中々むづかしいものである。花、日本花と区別する必要もないほど一般化されてきた今Hだが、伝統的な日本の花器に洋花を活けて、しつくりと調和させるいけばなの技術を、考えるのも面白い研究であろう。次の号にそんな作品を作ってみたいと思っている。多くなった。日本のこれまでの花かと思うものにも、外国柾と交合した品種のものも多い。アジサイ(ハイトランヂヤ)、つつじ(アザレア)やバラの様に、洋種の美しい品種のものが手近かに得られるようになった。洋種の菊、芍薬など、日本種に比較して色彩も豊かである。ものに洋種の花をそえて、結構よい調和をつくり出している。茶席の花にも洋花を使う時代である。日本花、洋花などと窮屈に考えないで、生活用具の中で、外国のもの、日本のもの、ここに掲載した「竹ラン。フ」もその一例だが、洋花が段々と日本的に見られる様になり、洋最近、いけばなに使う材料にも洋種のものが私達のいけばなには、日本の自然種の木や草自由に配合し趣味の豊かないけばなを活けるようにしたい。日本画が洋間によく調和する様に、洋画といわれる絵が床の間にもよく調和する。大体、日本画、洋画などと区別することさえも、どうかと思われる今日だが、お互いの描法、表現法などが―つになつて、現代の日本画ということになったのであろう。東京赤坂にあるホテルのロビーに、いつもいけばなの大作が活けてある。洋風の太広間に活けてある大作盛花は、松、梅、桜、椿などの日本的な趣味の吉家壮な大作品である。そしてその場所によく調和している。東郷青児や井上覚三の洋画が、日本の茶席に調和する様に、日本風、洋風と区別しないで、現代の生活に調和する「新しい美の様式」を考えるべきだと思う。「鑑賞果」といつて、木の実、くだものを室内装飾としてかざる、そんな形式のものが昔から行われている。漆器の盆、陶器の皿、その他の装飾用の器物に、瓜の類、果もの、自然生の実ものなど、色彩の美しいもの、形の面白いものに、根のある花を添えて飾りものとする。古いことばで「もりもの」というのだが、伝統的には南画盆栽趣味の渋い好みのものだが、これを新しい感じに作りかえてみるのも中々面白い。例えば銀色の装飾皿にマスカット、洋梨、パンヂー(根洗い)この3種を銀色盆に飾りつけて装飾にすると、新しい感じに見られ、色彩的にも美しい。これも日本趣味に洋種の材料を調和させた飾りものといえるだろう。調和ふくべの花器に洋花を活ける11

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