テキスト1969
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Rこれまでこのテキストに掲載した写真の中に、こんな傾向の作品がかなりあったと思うので、とくに「新しい感じのいけばな」とことわって見ていただくこともないのだが、そのつもりで作るとなると、いろいろ変ったものができるかもしれない。そんな意味で注意して欲しい。また、新しいといつても突飛な感じのものはないと思う。いけばなの上品さというものを離れてはいけないというのが私の信念である。Rの写真は、薬品で加工したまつ白の「標白しだ」とバラの二種瓶花である。バラは中央の開花と右にのびたつほみの二輪がオレンヂ色、下部の一輪が白色である。花器はグレーの濃淡で描いた新しい圏案がある。この瓶花は、花器の図案が大切な役目をしている。花材の複雑な形に対して、花器の単純なデザインは、この瓶花を新しく見せる主たる役を果していることになる。漂白しだやバラは珍らしい配合ではない。花器によって別の新しい感覚が生れるという、一つの作例である。源白シダは乾燥したものだが、使うときは新しい材料でないと新鮮な感じが出ない。A B ゴムの葉2枚の瓶花である。ボケの朱色、カユウの白、ゴムの濃緑、色彩的に美しい対照である。花器は賠白色とでもいうのか、少し濁った白色である。この花器も新鮮な形の花器でどの花にもよく調和する。朱と白と緑は普通によい色調といえる程度の配色だが、花材の形の組み合せが大変、調子のよい配合ということができる。Rボケ2本、カユウの花5本、カユウの花の配置とボケの枝の組み合せ、ゴムの前後に重ねる様な2枚の配列、花器の両端をあけて中央に株をすえたところ、中々技巧的である。いちばん前のゴムの葉のすそもとを、花器のふちにそつて切つてあるところ、これも―つのエ夫である。活けるのは簡単だが、活ける前に考えねばならぬ花といえる。新しい感じのいけばな,

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