テキスト1969
54/147

ス夕ィ)レここにならべた四つの作品は、基本型の応用といった程度の盛花と瓶花である。それぞれの形の中に‘―つの標準にそいながら材料の個性を活かす様に工夫されている、そんな考え方の花である。①の、菜のはなチューリッ。フは、春の花壇の様な、写実的な感じ。②の盛花は、新鮮な感じを作ろうとする工夫がみえる。③は、軽やかな形の中に調子をはずしたところがある。④は、軽やかな花材を技巧的にまとめたもの。温和な作品だが、それでもそれぞれの中に、それぞれの目標をもつている、といえる。② 3月より4月はじめの盛花である。菜のはなにチューリッ。フの配合は「春の野」といった感じの盛花である。分体花製に活けたが、この花型は写的実な感じを出す場合に適した形である。あざやかに黄色く咲いた菜のはな、淡紅のチユーリッ。フ、黄みどりの菜花の葉、花器の淡青磁、この取合せはやわらかい春の色調といえる。花菜のなたね、はたけ菜の花、菜のはなにも種類があるが、この写真の様に、自然に満明になるころの菜のはなが、いちばん美しい。春の野に出てみると、まっ黄の菜の花畑が見わたすかぎりひろがつて、それが一区測、一区測とくぎられて、はるかの山裾にまでつづく。そんな思いをおもいつつ、この盛花をいけた。②かきつばたの葉、紫色のスイトビー、種の盛花である。この盛花には新しい感じを出そうとする気持ちがみえる。スイトビーの紫花を十二、三本、花をかためて後方に深くさし、頭を白色のチューリップ、この三そろえて花の集団を作っている。あしもとに緑の茎がみえる。かきつばたは花を入れず、葉だけ使つて、それを通してスイトビーの花がかいまにみえる。チューリッ。フは白と白緑の葉、花器は白い水盤。紫と緑と白の配合による、色彩に重点をおいた盛花である。花形はそんなに変つていないが、この盛花には新しい感じを作ろうとする意図がある。いけばなはいつの場合にも創作的な試みのあることが大切である。①2... ① 四つの

元のページ  ../index.html#54

このブックを見る