テキスト1969
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1969年5月発行桑原専慶流家元白い翻斗状の花、かゆうは和名で「オランダカユウ」といわれるが、洋名では「カラー」よく似ているので、かえつてまぎらわしいが、私達のつかう通俗名「かゆう」は漢字で書けば「海芋」ということになる。さといも科の水草なのでこの名がついたのであろう。南アフリカの原産で、「ツアンテデスキア、エチオーピカ」と呼ばれるから、南阿王国エチオビアに多く咲く花であろう。葉はさといもの葉によく似ており「葉芋」という別の名もあるが、いけばなに使う場合、葉は水揚も悪くである。発音が形も平凡であり、花だけのほうが清新な感じがするので、葉を用いないことが多い。ちょうど夏の洋種のすすき「。ハンパス」葉をほとんど用いないのと、よく似た考え方である。(。ハン。ハスの葉は鋭く、形もよくない)。私達のいけばな材料として使うことが多いが、白い花の形といい、緑の直線の茎もなんとなく清新な感じの形のもので、どの花材と配合しての穂だけ使って、も調和よく使いみちの広い材料である。「清浄」という花言葉にある様に初夏にふさわして感じをもつている。桜の終った季節、木々の緑の葉に白いカユウの花の配合は、一層、季節感の深いいけばなを作ることができる。写真の瓶花は「やまなし」の木にかゆうを添えたものだが、大まかな技巧で自然風に花器につったてたこの瓶花は、初立の清新といった感じが深い。山梨は木肌が梨の木に似ているので通俗的にそう名付けられているのだが、三月より五月頃まで新緑の季節にふさわしい材料である。最近は園芸の発達によって四季の区別がなくなるほど、自由に季節を越えた花をみることができる。かゆうも12月から初夏まで、ほとんど一年の大部分の季節にみることのできる花だが、ほんとうの季節は五月六月であつて、この写真の様な感覚がこの花の季節感である。私逹のいけばなには材料の選択は自由であるが、季節のうつり変りのころには、いかにも春を迎える気持ち、夏を迎える気持ちの、季節慇の深い花を活けたいものである。温室咲きや特殊栽培の花でなく、自然の季節に咲く花を迎えて、そのうつり変りをたのしむ、それもいけばなの中で心要なことである。.... 毎月1回発行桑原専慶流No. 72 編集発行‘京都市中京区六角通烏丸西入おらんだかゆう桑原専渓いけばな

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