テキスト1969
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桑原専慶流桑原専艇流家元歯だ羊しこのごろ花屋で写真の様なワラビの若芽をみることがある。黒褐色に緑色が交ったもので茎の質が堅い種類のものである。これは沖縄、あまみ大烏の一部、八璽山群島に野生する「へご」の若芽であつて、いけばな材料としても中々おもしろい。写真の花は広口花瓶に剣山を入れて、ガーベラの紫赤色、淡紅、淡黄の花をとりあわせたのだが、色彩的にも中々美しい。花茎の直線と曲線、まる<巻いたへごの若芽の形が図案的な泌じで、盛花として明るい感覚をつくり出している。奄美(あまみ)大島に「アオネカヅラ」というしだがあって、これも内地にはなく、根茎が白緑.. 色で盆栽につくったのをみることがあるが、根の美しさに特徴のある中々風雅なものである。シダは種類の多いもので、私逹のハイキングの山道にも、庭にも自生するシダの中にも、いく種類からシダをみていると息う。ベニシダ、ヤプソデツ、ゼソマイ、ワラビ、イワヒバ、ヒトツバ、クリハラン、ツルシノブ、など、よく見なれたシダがあり、特に注意しないけれど、私達の庭にもいろいろなシダが目生している。そのうち、ベニシダ(棠裏の褐色のもの)は水似もよく、切りとつて盛花のあしらいに使うと、油爽な感じがして中々よい。洋種の「タマシダ」も水揚よく花材によく使われるが、アジアンタムの様に切るとしおれやすいものは、根を洗つてそのまま株つきで活ける。私の家の茶室の庭に「クリハラソ」がある、やはりシダ科の柏物だが、ヒトツバの秤類で、形も風雅で、この種類の中に、ヌカボシクリハラン、ヤリノホクリハラン、ホリバノクリハランその他いろいろ種類がある。よほど以前のことだったが、京都高島屋で「しだのいけばな」展を催したことがあった。桑原専渓主催、京都植物園、京都園芸倶楽部後援で開催したが、柏物園の好意によって多くの品秤のシダが出ロllnされ、シダに朴の花をあしらって瓶花盛花ほど出品したが、大変めずらしい花展であった。汲井敬太郎氏、蒲原昌夫氏の特別の御援助をいただいた。シダは一般のいけばな材料とは迩つて、活けることも少ないのだが、手近かにある材料であり、5月より及にかけて、杜若、すいれん、花葛茄、百合の類などよく調和するから、いろいろ工夫して活けることが望ましい。50瓶いけばな毎月1回発行ヘごの若芽をガーベラ編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専渓1969年4月発行No. 71

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