テキスト1969
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早春の山にさく花、はたうこんである。渋い褐色の花をつけて、枝振りも風雅な趣味の花、これにすかし百合の渋い紅色の花を4本そえて瓶花とした。花器は紺色の陶器の壷、これはたうこん・すかしゆりナこ。もさびた感じの濃い黒青色。下方に枝をさげて、垂体風に活けたが、自然のもつ枝振りが面白い形をみせて花器によく調和し2月から4月までは、春の花のシーズンである。自然に咲く木の花、草花の四季を通じての最も多い季節なのだが、いけばなにも花材の豊富なこのシーズンの花を考えてみて、その中に特徴のあるものをとりあげて、話顕にしてみよう。大体、春は木の花の多い季節だが、その多くの花木を考えみても、それぞれの枝振りにも変化があり、その自然のままの枝振りをどう花器におさめるか、また、どう組み合せるかに技術があるわけである。草花と迩つて花木はそれぞれ個性が変つており、その枝の線条をみつめて考えると、私達の頭で予想する以上の思いがけぬ様な変った形をもつているものがある。自然の木のもつている線の面白さ、形の複雑さを花器にどうおさめるかに私達のいけばなが生れることになる。例えば、木瓜(ほけ)(梅)(桃)(れんぎよう)(たれ柳)の様に、特徴のあるものが多い。私達のいけばなは、木の花、草の花を組み合せることが、ほとんど多いのだが、春の花木を花器に活ける春のいけばな材料場合、これは木の枝であるけれど、ただ木の枝と見ないで、個性をもつ線」であると考える。それをどう配置し、どう組み合せることによって、ここにいけばなの形が生れることになるのだから、枝をよくみつめて、その花材の個性を活かすことと同時に、その糾み合せの中に、自分の考案を織り込むことが大切である。このシーズンの花木は、随分種類が多いが、その中で特徴のあるものを考えてみると椿、梅、桜、たれ柳、桃、木蓮、れんぎよう、ほけ、山さるすべり楓(べにさんご)柊、南天、紅つげ、アカシャ、エリカその他、種類が多いが、それぞれの枝と幹の調子も変つており、その特徴をよくつかんで、個性のある花型を作るのがよい。たとえば、ほけの奔放なひろがりのある形、たれ柳の芽吹き、桃の直立した枝茎、アカシャの軽やかな枝エリカのかたまり、紅つげのかたまり、山さるすべり、べにさんごの立榮原専渓「それぞれ体的な直線など、その他、多くの木を考えてみると、その独特な個性をもつ形がある。それらをよくみつめて、稲類のかわるごとに、それの特長がよく感じられる様な花型につくりあげる。これは基本的な花型から離れて、材料を活かすための、その材料のもつ味わいをより多く感じさせる様なそんな気持をもつて、形を作る様にする。草花は四季の花材ともに、大体はまつすぐな形のものが多いが、木ものは変化があり、それだけにいけばなには変化を作ることのできる材料でもある。材料を手にしたとき、数多く枝を重ねて枝茎の集まりの中に変化を見ることもできるし、その中せて、その思い切った枝のひろがりによって、全体の花型を変化させることもできる。盛花瓶花の自由花型は、作る人の考え方によって新しい形が生れるものであり、その上に、以上にのべた様に変化の多い木もののシーズンであるこの季節は、作る人の創作的な考案と、目然の変化ある花木との結びあいによって、優れた形がつくられることになる。2月から3月4月へかけて、私どもの使う草花材料を考えてみよう。随分、豊富な季節であるが、その中の1本2本が、形を破る様に飛躍さ6

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