テキスト1969
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II ②白と紅色の入りまじった八重咲人輪「せいひつばき」である。重たげな化が葉うらに見えて、細い枝に似つかぬほどの派手な花を咲かせている。手にとつてみると、名幹のさびも面白く枝振りもよい。さて、花器におさめようとすると、枝茎の細い割合いに花が重く、中々息う様にとまらない。少し口の細い背詞い花器をもつてきて、どうにかとめることができた。右勝手の枝なので、布へ副を長く、右前下へ胴の閲花を、うつむくままに垂れさせて、これでどうにか形を作ったが、菜の少ないまばらな枝茎が見えて、雅致のある花型となった。この椿の様に素材の形そのものが変調な枝振りの場合は、自分の息う様に形をきめようとしないで、自然の形のままに、つばき自身のもつている形のままに、それを花器にどうおさめるかということを考えるのが、一ばん花を引き立てることになる。理想的にいうと、椿の枝振りによつて、それがよくおさまる花器を選ぶ、といった行き方が花を引き立てることになり、花にさからわないでうまくおさめることになる。せいひ(足飛)は、一般的には(ヨロ緋)とも書くが、紅色の花辮の中に白点が飛ぶ様にみえるという意から来た名前だろう。「椿菜のかぐろ厚葉の17の光り真赤の花がこぼれんとすも」という古呆千樫氏の歌にある様な、浪厚な帖趣である。(垂休)kト、-fl ③淡紅色―重咲人輪のつばき。「あけぽの」である。咲きぎわの叫る<美しい花で、茶屈の花によく使われるが、かけばなとして、小品のおきばなとして活けることが多い。この花器は、紅と紫の入りまじった辰砂 昭(しんしや)の鯉且(こいみみ)の壷で、淡紅色の椿と花器の紅色の配合である。大きく活けるには枝振りがよくないが、色彩的に美しいので、この花恭におさめることにした。2 2 . .3. (せいひ)(あけぼの)

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