テキスト1969
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を入ると~粉島つつじ今日は10月27日である。きのう服山寺に参詣して域内の「ムラサキシキプ」の紫の実をみたのだが、平安朝のすそ長の衣裳にあるような、そのさびた紫の色にすつかり心をひかれて、今日、石山寺へ車を走らせて現代版の石山寺参詣ということになった。日曜あけの今日であるが、学生団体の参観者が多く、表門から境内へかけて中々の賑わいである。石山寺は天平時代に良弁僧正によつて開基され、現在の堂宇は九00年以前、承暦初年の造営されたものといわれている。紫式部が石山寺に参篭して源氏物語五十四帖を書いたという伝説は有名であるが、植物のムラサキシキプのことは、この物語には書かれてないし、石山寺の境内にもムラサキシキプの実はみかけない。本堂に近い庭園に「珪灰石」の露頭があり、その附近に紅色の貴船菊が群つて咲いている。貴船菊(キブ石山寺の入口、仁王門のあうんの像の前にかけられた「大担灯」石山守と黒々と暑かれてある。1c植込みが見祖である。ネギク)は秋明菊(シュウメイギク)ともいわれ、白花と紅花の2種がある。附近に表示板があって次の様に記されてある。天然記念物石山珪灰石全山この岩によってなる雄大なもので鉱物学上、世界に誇る珍石、秋には岩の根もとに石山観音菊が咲く。この貴船菊というのは、京都洛北貴船、鞍馬の山地に咲くといわれるのだが、現在はほとんど野生の花をみかけることが少なく、貴船に限らず全国の山地の特殊な場所に咲く花でないかと思う。草木図説によるとキブネギク、シュウメイギク、秋牡丹などと呼ばれ、色は淡紅紫、支那にも産し、近来外国種の白花のものがあり、本邦産と英国印度産との人工交配による品種で、ボタンキプネギクという種類がある、と記されてある。さて、ムラサキシキプの実を見て... 丁山寺までやつてきたが、ここにはキブネギクがあつて、ムラサキシキブの実はみかけられない。ムラサキシキブといわれる実の低木を、紫式部の由紹と重ねて考えることが、錯覚かも知れないけれど、その詮索はしばらくおき、花の名の風雅を思うき、植物の中に定家かずら、紫式部などという名のあるのは、なんとなく楽しい樟いがするのである。石山寺の貴船菊~ 秋明菊といい,脚西では貨船菊といわれている。10月27日の今日花はすでに盛りを過ぎていた。むらさきがかつた紅花,関東ではノ

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