テキスト1969
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し、,0、。先生の教場で習うお花は、大体、取合せができているのだから、活けやすいし、配合についてあまり頭をつかうことが少ないのだが、さて、自分で花屋へ買いに行くと、どれを買つていいものやら、中々むづかしい。花屋の店には沢山種類があって、花屋の店へはいるとたんに、どれもこれも目の中へとびこんできて、さてどれにしようかと迷う。二種以上の配合となるといよいよむづかし花をうまく活けるということは、形や技巧も第一だけれど、まずその前に材料の選択が大切だということが、しみじみとわかる。そこで、その材料を選択し配合する、その実際を研究するために、役立たせる目的でこの原稿を書くことにした。これから、毎月の取合せを書いて、それについての短い感想を添えて、その花材が実際によかったかという反省も添えて、皆さんのご参考にしようと思つている。これは、ある教場で実際に習う人達がいつせいに活けた、お稽古の花であつて、すでに行われた「きのうのお話」になるが、これからのための参考になるし、なにより、実際のそのままの記録であるから、そんな意味でほんとうのお話として、価値もあると息うので、こんな原稿を書くことにした。さて、ここの教場は、京都での代表的な教場であり、練習用の材料も、京都市内の一ばん上級の店で、その店の中でも一等よい材料を選んで、買うことにしている。材料費もけい古花としてはよい方でないかと思っているのだが、これからお話の中で、その取合せとともに材料費もそのまま書いて御参考に資したいと思っている。日記風に書いてゆこうと思っているのだが、あわせてその花を簡単にスケッチして添えておく。これは花型の勉強としては、絵が簡単なのでわかりにくいと思うのだが、ここでは配合に重点をおくので、ただ、その取り合せの参考として見て欲しさて、材料を選択する場合、まず、なにより必要なことは、花を買う花店がどんな店であるかということが重点になつてくる。この教場では大体によい材料を使つているが、ただ、よい花を買うというだけではなく、花を注文するとき、かなり注意をして選択する。悪い花はすぐとりかえさせる、こごとはいう。花屋にとつては随分うるさい先生なのである。材料のよしあし、品質の優劣は充分わかつているし、勿論、新鮮な材料でないと絶体だめだし、趣味の悪い花は用いない。よい面は、材料のよしあしはよく知つているし、値段もこまかい点までよく解つており、したがつて高い安いは一度だっていったことはない。勿論、値引きなどこれまでやったことはない。請求書そのままである。ただ、よい花を持つてこい、この一点である。これはよい花を活けたいと思っ、こちらのほんとうの心である。随つて、花屋にとつては一ばんむづかしい先生であるし、一面、一ばんよいおとくいであるに違いない。私がこんなお話を書くのは、花の買い方の理解のために必要なことだからそのつもりで読んで欲しい。さて、稽古日の早朝になると、花屋からその日に入った新しい花の見本をとりよせる。店にあるだけの材料を一本ずつ全部もつてこさせる。その中から、稽古に使う配合をする。前回の花材を考えて、なるべく傾向の変ったもの、練習の教材として交果のあるもの、趣味のよいもの、色調の美しいもの、花器はどんなものを使うのか、などを見合せて材料を選ぶ。取合せをきめると、これを何人分、これを何人分と注文をする。そして、しばらくして、私の気持にあった配合の材料が大量にとどくという仕組みになっている。納品した材料に対しては、絶対、こごとは出さない、全部こちらの責任である。たとえ、その日の選択が悪かったとしても花屋の責任でなく先生の責任となる。したがつて、時として、これはしくじったなと思うときができてくる。勿論、先生の責任である。大体、先生と花屋(材料提供者)とはまことに深い関係にあつて、よい花屋を選ばないと、どんなによい花を活けようと思つても、中々むづかしい。いちいち教えねばならん花屋など、最初からつきあわぬことである。いけばなの生命線は材料の良否であり、その提供者の花屋の選び方であることを充分考えなければならない。ここの教場へは、二つの店から材料を納品している。―錬習用の花材(けい古花)を納めさせ‘―つの店は会場用の花、その他写真用、特殊な必要のための材料をつの店は教場買う店である。花屋でもその店の傾向があって、手持ちの花材や、市場で仕入れる材料にもとくちょうがあり、それも知つておく必要がある。さて、この教場へ納めるけいこ用花材の値段であるが、大体一回一人分の花材が三五0円より四00円ということになつている。ついこの間、なつている。京都市内ではこれでも高い方だと思うが、東京大阪ではこの程度が普通であろう。とにかく四00円の花代であると、現在では、まずよい度の花を買うことができる。分量はたっぷりとあって一瓶活けて残るほどもある。とにかくこの程度だと、今のところ、ゅったりとして活けられる。とにかく、この教場ではずつと以前から練羽日用の材料でも、かなり高級の材料を使うことにしている。これは、けいこの材料といつても、常によい花材を使って、それに慣れる様に仕向けているのである。よい習慣をつけさせ、材料に対して高い目を養うこと、多少ぜいたくであつても、よい材料を知り自分が花屋で買うとき、よい質のものを選ぶ様に、その見方を高くする様に、そんな風に仕向けているのである。花の技術はいうまでもないが、その上に材料の鮮度、品質、色調、趣味などに注意する様に仕向けている。三00円であった花代が四00円に..... し花材配合の研究NO. 1 10 ある教場の記録

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