テキスト1969
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、LVアンスリームの葉かがりびばな「観葉植物」という言葉がある。葉の色彩と形が美しく、花がなくとも葉の美しさを楽しむ、そんな種類の植物のことである。観葉植物という言葉は学用語でないかも知れないが一般によく使われる言葉である。観賞に値する美しい葉の植物ということは、それが、外国種であつても日本種の植物であつても、すべて同じ様に考えてもよいわけだが、普通、観葉植物というと主として熱帯地方の珍奇な葉ものと考えられやす例えば、はげいとう、ふ入り葉のばらん、はまおぎの白、はほたんなどのように日本的な葉ものには、観葉植物という呼び名はあまりしないようである。最近、いけばなの材料として外国種の葉ものを活けることが多くなった。モンステラ、ゴム、アス。ハラカスの類、シダの類、ドラセナ、アロカシャ、カラジュームなど普通に使われているのだが、温室栽培のこれらの葉ものの名を覚えるのが中々大変である。温室露地のすべての観葉、。観葉植物をいける専渓植物ということになれば随分おびただしい種類にのほるだろうが、いけばなを楽しむものにとつては、せめては、そのうちの切り花として一般的に使われる程度は、正しい名を覚えておく必要があると思うのである。そんな注意をうながす意味もふくめて、このテキストには「観葉植物をいける」という目標のもとに作品を写真にしてみた。多くの洋種葉ものの中から、一部分だけをとりあげることになるのだが、最近、植物図鑑など俊れた書物が出版されているから、皆さんも参考書をご魏になって関心を高められるように希望する次第である。(写真の瓶花)アンスリームの葉4枚、かかりびばな1本を、変形の花瓶に活けた。かがりびなは印度の花だといわれているのだが、黄褐色の蘭の花の様な形の花で、なんとなく異国的であり雅趣の深い花である。シクラメンを和名でかがりびばなというのだが、この花もシクラメンとよく似た花形であり、シリア原産のシクラメンと同系統の花の様に思われる。この瓶花はアンスリームの葉の細い茎の美しい用い方、濃い緑の葉の面の配列、かがりびなの渋い黄撮色、この配合が雅趣のある中に明るい形をみせている瓶花である。毎月1回発行桑原専慶流編集発行京都市中京区六角通烏丸西入1969年12月発行桑原専慶流家元いけばなNo. 79

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