テキスト1969
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ヽ~゜ここでは、どうも感心しない花、注意を要する花、そんな意味のお話をしてみよう。多くの花の中には、活けてみてもどうにも引きたたない、という花があるものである。花屋でみると、ちよっと面白い花だな、と思って買つて帰り、さて活けてみると花器にも調和が悪く、普通では中々よい調子が出ない花がある。それぞれすき姫いがあって、一般的には標準がつけられないし、材料の鮮度や形によっても感じの変つてみえるものであるから、はつきりとはきめられないが私の考えのままに例を挙げてみることとする。以下にあげる花は警戒を要する、という意味である。(トリカブト)山に咲く濃い紫色の花だが、案外水揚げが悪く、たっぷりとした葉があつて格好のよい姿だが、葉の濃緑と紫花との配色が悪く、活けても引き立たないし、夜にはほとんど色のはつきりしない花である。失敗率の高い材料感じのよくない花(ホトトギス)9月に入って見る山草、禍色の花のころ花屋にあるものは美しくもなく、雅趣にも乞しく、活けても効果がない。漸く10月はじめ開花する頃になると、少し蔽じがよくなるが、葉も汚ないものが多い。(チューベローズ)9月下旬から10月へかけての花。花壇で咲くチュローベーズは花も美しく咲き香りもよいが、花屋のものは花は咲かないし、まつすぐに立った形も平凡である。(コスモス)花壇で乱れて咲くコスモスは、魅カのある花なのに、いけばなには引き立たない花である。病院の待合室へでも飾る程度の花。(ガーベラ八重咲き)ガーベラは単弁にかぎる。軽やかにすつきりしているところが、ガーベラの味わいである。八重咲きのものは花もしつこく、小時間で花の形がおかしくなる。(グラジオラス)太くがっちりしているものは風梢に乏しい。やや細く色の強いもの紫の花は慇じがよい。黄花のものは俗っぽい感じがする。うまく選択しないと平凡なものになる。(マーガレット)温室で鉢植にしたのをみると、可は10月に入ってから咲くが、初期Vし憐な感じがするのだが、花屋の切り花は、栽培の仕方が違うので水揚げも悪く、マーガレットの感じのない平凡な花。(スタージス)5月頃に咲く洋花。低俗な花。(トルコキキョウ)うす紫の花の色が明るくよい花だが、活けるとき、つぼみの細い茎をとりさつて活けないと、平凡な花になる。使い方に工夫のいる花。(アンセミス)黄花のノコギリ草、スタージスと同じ程度の俗な花。花の黄色は面白い色だが、趣味の悪い花である。その他いろいろあるが、タイサンボク、ビラカンサス、コプシノハナ、ニワウメ、ニワザクラなどの木の花も使いにくい材料。草花では、アワモリソウ、ャリケイトウ、カンナ、サルビアなど。ストレチアに葉をつけて売つているが、これも不必要なもので花だけ活けるほうがよい。カユウの葉はほとんどつけないこととなつているがこれも花だけのほうがよく、パン。ハスは穂だけ使うのが常識のようになつているが、これも葉は鋭く使いにだらりとしたまんさくの青葉、やつでの幹つき、やつでは葉にも品格とぼしく感心しない。葉だけ切つて使うのも形はよいのに品位がない。このごろ花屋でみかける花ばしようというもの、朱色の色も嫌だし、なんとなく不潔な感じの花である。その他にまだあるだろうが、思い浮かばないのでこの辺にしておく。とにかく、感じのよくない花をわざわざ選んで活ける人がある。沢山花があるのに、と、思っことが時々ある。お魚、野菜、果もの、お菓子、お食事、すべて一級二級三級という様に、等級こそつけてないが、ビンからキリまであるのが普通の様に考えられているのだが、いけばな材料の花の等級というのはどうなつているのだろう。もちろん、花屋の店では一級二級などとは害いてないが、当然これにも上から下まで、同じ商品でも差別があつて値段もそれによって迎う。高級品は花も葉も美しいし、第一、活けてから日もちがよい。品質のよくないもの、花首の柔らかいもの、葉のだらりとしたもの、虫つきの葉とにかく栽培不出来の不良品、こんなのが三等品ということになる。例えばカーネーションでも、茎の柔らかくて倒れる様なもの、花の貧弱なもの、ガク割れ、平凡な品種、こんなものは値段も安く、よくした品質、鮮度もので日持ちが悪い。以前のことだが、カーネーションに1本ずつハリガネでささえをして、売っているのをみかけたことがある。三級品のカーネーションの首の垂れる様なのを上を向かせて売ろうとする花屋の苦肉の策だが、両売ともなればいろいろな工夫のあるものと證いたことがあった。優れたいけばなを作るためには、よい材料を使うことが必要な条件である。品笠のよしあしを見わけることにも目がいるし、慣れないとわかりにくいということもあるが、一般的にいえることは、まず信用できるよい店を選ぷことである。そして、値段よりも品ものを第一に選ぶ、値段が気に入らなければ分量を少なくする。3本よりも1本という様に高級品を買うことである。1本でもよいからよい花を選んで、それをすつきり活ける様にすることである。新鮮な花を買う。これも大切なことである。珍らしい花のふるいものよりも、ありふれた花でもよいから、鮮度の新しいものを買う。温室咲きのバラの店ぶるしのものよりも、新しい菜種の方がよい、という意味である。花の買いものは中々むづかしいもので、趣味のよい花、新鮮な花、品質のよいもの、活けてから引き立つ花、その辺をよく考えて買うことが大切である。.... ... ... 12

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