テキスト1969
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R栗の実の近くの陽あたりのよいところに、松の枝にからんで山藤の太い木がある。尖端のツルがのびて萩の咲いているくさむらに倒れ込んでいる。上につき出た枝には、禍色の実がついて、枝の形もよい。少し傾いた斜隔の光をうけて藤の実が浮き立つように、遠くの山並みの前に重なってみえ、写真効呆も満点である。足もとの萩の花葉に光りをうけて新鮮にみえる。山藤の花は五月、六月の頃に咲き夏に緑の実をつけ秋季に入って禄色になる。同じ山藤の種類に「土用藤」というのがある。小葉の細い蔓もので七月中旬頃、草藤のような小さい花をつけ、水揚げのよい種類である。山藤は実つきのものを瓶花に使うのが普通であるが、土用藤は花のある頃にかけ花など、小品花に使う。これで今日のいけばなハイキングは終りである。車に乗り込みカープの多い光悦寺まで走り降る。R廊ガ峰をくだるとすぐ光悦寺である。駐車場に車を入れて、境内に入る。萩は少し晩いがまだ残花が咲き残って、すすきの尾花の中に風雅な趣きをみせている。写真を数枚とつて帰路につく。午後6時、帰宅してすぐ、採集の花材を整理して水にうつす。しばらくは休憩と食事。藤の実を向うがけの篭の花器に活ける。白の大輪菊を2本つける。たっぷりとした大篭を遮の胴釘にかけて、藤の枝を自然のままにさげて、かけばなを作ったが、中々よい調和である。荒目の篭が藤の実の野趣とびったりとした感じで豊かな雅趣がある。自分で採集してきた材料は、切るときに活ける心で選択してあるので、いよいよ活ける段階になると、簡単に調子が作れる。すつすつと入ったこのかけ花である。かけ花には横がけの花(柱がけ)と、壁つきに正面向けて活ける向うがけの二種がある。柱がけの花は小品に軽く活けるのが普通だが、向うがけの花は花器も少したっぷりとしたものに、やや大きい花を活けることができる。写真の向うがけは、普通の瓶花なみの大きさだが、これは床の間の墜ではなくて、玄関の上り口の壁であって場所は4メーター四方もあるから、結構、これでよく調和している。前方へ強く枝をさし出して活け、左右へは張り出さない様にするのが、向うがけの形である。R 祇園祭のころ土用藤の花が咲く.<ねくねとした細いつるによくひきしまつた小さい葉,白<緑のわびしい花が笹の葉などに巻きついて,渓流にかかつて咲くこの花の詩趣を,そのまま伝えてくれる。岩を以て固めし谷や土用藤禅渕R

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