テキスト1969
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R落莫の晩秋の情緒を思わせる柿である。葉の落ちつくしてまばらな枝が、寒むざむと感じられるのが、柿の詩趣であろうと思っ。柿に菊の配合は四季の花材の中でも指折つて考えられる瓶花のよい取合せであり、どの花瓶にもよく調和する。肱ガ峰の山の幸(さち)淡い紅むらさきの大輪菊を2本添えて、花器は先日、五条坂で買つてきた新しい、柿の枝に花器に活けることにした。剣山の重いものを使って柿を2本、右と左に立て中央に菊を2本、長短に位置をつけて挿した。この瓶花は柿のまばらな枝をよくみせるために、右方の枝の足もとをかくさない様に考えて菊を挿した。菊と柿の枝(右方の)の空間にこの瓶花の特徴がある。R― R峠の道にそうて家が2軒ある。後方の村落まで2キロ、前方の脱ガ峰まで2キロという、まことにわびしい街道の住家である。それでも電線はみえて、ここは鷹ガ峰町の北端である。そのうちの一軒の庭に柿の木をみつけて、例の如く写真をとらせてもらい、手のふれる程度の低い枝を一枝、切らせてもらう。脱ガ峰、その名の示すように京都市の北辺に立つ山蜂の一角である。今は周辺の住宅地帯となったけれど、それでも大徳寺までは約3キロ、昔から寒菊の名所といわれ、京都市内へ嵐雪を吹きおろす一ばん冷涼の地帯といわれている。の既ガ峰に椿の名家があって、いけばなに使う白玉椿や本波、緋鹿の子などの珍種を切りに行ったものである。旧市内から歩いて随分遠い道であった。私の幼ないころ、こ6 瓶花ざくろの実つきの枝2本白と褐色の大輪菊3本@

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