テキスト1969
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毎月1回発行入っ゜「鑑裳陶器」という言葉がある。その陶器は美術的なもち味のあるもので、花を活けたり、食器として実用に使わなくとも、陶堺そのものを鑑貨するための作品だという意味であろ陶船は漆界染織などとともにユ芸品といわれて、実際の生活のための用具として作られるのが、その本質的な性格なのだが、またその中に、美術的な作品として鑑貨するにとどまる種類のものもある、ということである。鑑貨するということは、陶器の場合、それを手にとつて味わうこともあり、側へ飾つてながめ、あるいは装飾に使うこともあるであろう。花瓶は花を活けるための容恕だが、花を活けないで花瓶だけを飾つて交しむという場合も多い。さて、今日はテキストのいけばなを写真にとる日なのだが、そのあわただしい中に、手近かに集つている花瓶をながめながら、形の面白いもの、色の美しいものを数個ならべてみると、中々面白い地じがある。10儲ほど大小のものを一と所にかためてみて、これはただ花瓶が集つているというだけでなく、ちょうどバレーの刑抑にあるような集団の美しさ、面白さを似然、みつけだしたのである。そこで、これを写真にしてみようと、そのうちの五個だけ送び出してならべてみた。形の変化のあるものをとりあわせたが、京都焼、古乃波、備前、信楽と陶船の出所がとりあわされているのも面白い。そのうち一つだけ傾きのある壷も交えて写真効朱を考え、いけばな家らしく花を3種なんとなく挿して装飾を加えた。さて、あらたまつてならべてみると、最初の面白さが慇じられない。配附の仕方が拙いのかも知れない。いささかかたい感じがみえる。能や舞踊の舞台をみても、その所作に自然さや柔らかみが大切なように、花盤をならべるだけでも、なんとなく並べるというのは、中々むづかしいものである。とにかく写真としては中々面白いので、今月号のテキストに掲載することにした。(専渓)装飾花と花瓶と桑原専慶流No. 77 編集発行京都市中京区六角通烏丸西入1969年10月発行桑原専慶流家元いけばな

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