テキスト1969
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R蓮の生花はすせいかこの図は数年以前に活けた私の作品である。写生して着色木版画としたものだが、ちょうど季節の花なので再録することにした。蓮の水揚は中々むづかしいもので、この生花は8月20日となつているが、7月中旬から8月のはじめの頃と、終りがたの8月下旬とは、水揚げにもよほど差がある。が立ち始めると水揚げがよくなるというわけである。この絵の作品は、高さ(花瓶とも)七尺ばかりの大作で、ひらき葉は真、副、留に3枚、巻葉は胴と控に2本、花は真の前、控に2本入れ、蓮台を見越しに1本使って、過去、現在、少し涼風未来の三態を一瓶の中に見せることが形式になつている。水揚げの悪いもので、早朝6時頃に切りとり、すぐ水揚げをして活けるのだが、午後3時頃をすぎるとひらき葉は水をさげることが多い。これはこの図の様に背高く大きい作品の場合で、(池より栽集した材料)、庭の鉢植の蓮は(ほんばす)日持ちよく二、三日は保つ。たっぷりとした花器に入れるのがよく、大葉の形との釣合いからも大振りの花器が好ましい。図には薄板(うす板)を使ってあるが、花器は青磁花瓶、板は黒色である。生花の気品のある花形と、堂々とした蓮の形と、よく調和した作品でないかと思う。A 黒色の陶器の鉢、しき板は洋材塗料仕上げの組み板の瓶しき。この板は洋風好みのもので堅い質の板で作った、長野県のおみやげ品である。花器を中央に置くと平凡なので、左後方のすみへ寄せて置き、花器が少しはみ出している様に飾りつけてみた。台も花器も少し調子が変つているので、案外、こんな置きあわせも面白いことがある。花材を右へ寄せて、花器の左方をすかせて内部のみえる様にしてある。バラは紫紅色の花3輪、かきつRかきつばたの葉ばら初ればたのふいり葉の前と、後方深く、さしわけた。この盛花は平凡な作品だが花器の置き方と、組み板の花盤をおみせするために掲載した。しきもの花台を使った作品を15種おみせしたことになる。花台の種類も多いし、しき板、しきものの類で利用できる家庭用品もいろいろあることと思っ゜要するに古典的な道具は形式の定ったものもあるが、その他のものは品格のよい美しい形と色のものをとり合せて、調和のよい装飾をすればよいわけである。姜lハNぉ柏閉-\ ・-1 . lB 10

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