テキスト1969
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日本の風景にかかせないのは松である。海辺の黒松、山の赤松、松と家、その住居と生活。古い絵画にも、新しい文学にも松のある風景は大切な舞合装置となつている。松は東半球に多い樹木であるが、日本朝鮮、中国に自化するものが多桑原専渓く、その品種も数十秤に及ぶといわれており、世界に分布する松の種屈クロマツ、アカマツ、ゴヨウマッ‘ハイマツ、帆鮮ゴヨウ、エゾマツ、トドマツ、カラマツなど、本土にある松も種類が多いが、同じクロマッでも東海地方の海岸の松と、瀬戸内洵方面のクロマツは、手にとつてみると、樹幹も葉も少し形と色が異る様である。土地によっては同じ種屈のものも変化するのではないかと111心は90種もあるということである。う。京都地方の松はほとんど赤松が多く、悔風をうける阪神地方の山地になると、赤松の木肌、葉は黒松の色の強くするどい葉の、俗に「あいまつ」といつているが、そんな成心じの松が多い。拇と山の中間地術の混血児の様なものであろう。学名にアイグロマツというのがあるが、その莉類かと111心われる。五葉松にも種属が多いが、針葉の冗つあるゴヨウマツは全国に分布しているが、これとよく似たヒメコマ(瓶花)V30センチほどもある。ツは同じ緑青の短い築で、北海道より本州中部地方を南限として自生する松であり、ゴヨウマツ、ヒメコマツの区別が中々みわけにくい。日本の伝統の中に、松は多くの場面に使われている。松竹梅の松、饒台の松、舞踊の中にある松、能楽撒の松、染織の御所どき校様の中にある松など、日本古来の歴史と生活の象徴として松を扱っている。能舞合の正面に見える鏡板の松は、その昔、大樹に神が宿るという忍想から出発して、神前に舞楽を奏して神意をなぐさめるという信仰から、舞台にも大樹の松を拙いて、その前で演能することになったものといわれている。日本の生活にある松は、ただにこれが椋物としてではなく、宗教的な祁敬を織りまじえて、「儀式の松」「祝意の象徴」としてとり扱われているのである。写真のいけばなは「大王松と紅菊」の瓶花だが、大王松は北米の原産で、樹高30メーターに及ぶ大樹の、まことに雄大な松である。葉は三菓で長一枝でも大きい形なので、活けにくい材料だが、花器をよく選んで、ト方に止しく安定させ、あしらいの花はしつかりとした大輪の花をつけると、威厳のあるしつかりとした瓶花が作れる。大土の威厳をそなえる、というのがその名の起りであろう。毎月1回発行桑原専慶流No. 68 松編集発行京都市中京区六角通烏丸西入胆るい感じの瓶花,新年のいけばなとして洋至に調和のよい花である。大王松(だいおおしよう)紅大輪菊桑原専殷流家元1969年1月発行いけばな

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