テキスト1968
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ものの実がいけばな材料に多く使われる。さんきらい、むべ、あけびなどの夏の実ものから、秋に入ると実もののシーズンと思っほど、いろいろの実ものを活ける。柿、栗、椿、かりん、色づいたさんきらい、梅もどき、しなの柿、つるもどき、いいぎり、なんてん、ざくろ、かりん、山藤の実、いばら、草の実、からすうり、その他、中秋から初冬にかけて、木もの草実つきの木草を活けることが多い。このテキストの写真にも、ぶどう、なたまめ、はしばみ、仏手柑、まゆみなどを使つてあるのだが、季節的に実ものを活ける機会も多いので、それ左話題にして見よう。瓶花盛花の材料としては、どんな実ものでも雅致のあるもの、上品な感じものなれば花材として使うことができるのだが、その中に趣味のよくないものがあり、活け上げてそれほど引きたたないものもある。柿は枝に二つ三つ実がついているもの、―つでもよいが、多いのは品が悪い。梅もどきの赤も同様、多い実つきのものは下品であり、まばらにわびしげに見えるのが梅もどきの風雅を感じられる。珍らしいとされている白の梅もどきは活けて引きたたない材料で実つきの多いほどよくない。桐の実は俗な趣味である。形もよくない嫌な材料である。さんざし、ざくろの実。これは木はだに美しいものが少く、活け上げてもすつきりしない。総体に.. 111に新鮮な慇じのある意匠花である。いつて、実の多すぎるものは上品に見えないし活けにくい。柿の実の沢山つきすぎて璽たいもの、その他、実のつきすぎて重くるしいもの、これは雅趣に乏しいし、美しく慇じられないと息う。このテキストの写真にある「ぶどう」「仏手柑ーーぶしゆかん」「まゆみ」など、いずれも珍らしい材料で、一般的な材料ではないが、こんな実ものも使えるという参考のために活けて見たが、なるべく上品で雅致のある材料をえらんで、活けたいものである。農村山村に住む皆さんは、手近かに面白い姿の実ものがあるだろうから、それを材料として活けられる様におすすめする。野趣のある自然の実ものは、花器も渋い好みの雅致のあるものを選んで活けることもよく、また反対に、この「ぶどう」の様に新しい形の花器に入れ、洋花ととり合せるのも、美しい調和である。数日前テキストの写真をとるために、宇治、黄槃方面を歩いたが、その道でみつけたこの「ぶどう」の木、ほとんどすがれ残った実が放い紫色をみせて、枯葉とともに風雅な姿である。アイリスの青色の花と配合してみると、なんとなく明るさがあり、その中に枇い味わいもあって、さわやかなよい花ができた。秋の季節感の毎月1回発行桑原専慶流花材ぶどうアイリス編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専疫流家元No. 67 みものの風雅いけばな1968年12月発行

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