テキスト1968
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(桑原冨春軒伝書、立花時勢粧より)紅葉は瓶上に高雄山をうつして峰より染め。桜は荊上に吉野山をうつして麓より咲く。楓の紅葉は本朝詩歌第一の景物にして。名をいわずしてもみぢとばかり言うは楓の紅葉なり。されば桜を以ては諸花のかしらとし。楓をもつては紅葉の長とす。これ立花の賞翫極々の秘伝也。されば一色物と定めて外の木草をまじえずして。楓ばかりを以て一瓶を成就す。名付けて真の一色と云゜紅葉(一色物祝着)(鶏冠木順和名紅楓)唐詩、停車坐愛楓林晩霜葉紅於二月花ーーニハ八0年I紅葉にはまだ早い梱だが、荒目の野菜篭を花器に使つて、で盛花をつくった。貴船菊は秋明菊(しゅうめいぎく)ともいい、そのさびた紅色とやさしくも立ちあがるその花の姿は、実に風雅である。北山の貴船に咲くという貴船菊は、今はほとんど見ることもないが、なんとなく野趣が憑じられて楓にとりあわせてみると、まことに素朴な味わいがある。「せばまりてせばまりて浪し硲紅葉」という旬の様に、詩仙堂の谷川に色づく紅葉は朱よりも赤く、まことに濃き紅(くれない)である。紅色に咲いた八重の費船菊、淡黄の山菊の三種京都北山一乗寺にある詩仙堂(しせんどう)の秋色である。詩仙堂は江戸初期の詩人、石川丈山の遺跡で、丈山は三河に生れ徳川家康に仕え一六七二年に歿した。学問に長じ晩年京都北山に詩仙堂を築いて屈栖した。大阪夏の陣に偉功をたてた武人でもあった。四明山人、詩仙拡と号し一乗寺に閑居したのは寛永18年である。北山は紅葉の美しいところ、なんてん、梅もどきなど実ものの色もさえて、秋はことに風雅な勝地である。この写真は詩仙堂の三層楼より庭を写したものだが、山茶花の老樹の向うに楓の紅葉がことに美しい。附近には低い土塀をめぐらした農家の庭、百日草の残花や早咲きの椿の花が見え、年ごとに新しい明なみに変つて行く中に、山村の名残りを感じられる。紅葉紅葉流れる仙〗堂誓,詩し

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