テキスト1968
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(やまくに)京都駅前より鶴が岡行きのバスに乗り、山1へ行ったのは10月のすえ、冷やかな時雨の降る日であった。高糾から中川、小野郷をすぎて周山街追に入り、常照皇寺前まで約2時間、周山街道からわき道へ入って4キロほどの淋しい村見が山国であった。京都時代祭の花形、山国隊のその出生地である。パスを降りて村道の石段を登ると常照出寺につく。ここに有名な「しだれ桜」があり、紅葉にはまだ早い季節だが、11月中旬には楓の紅、いちょうの黄菜が緑樹に交つて目もさめる様に美しい。この写真は、常照畠寺附近の竹林を背景にした山囚村の晩秋の風景である。吹きおろす晩秋の雨は、まつ白な栃雨となつて、竹薮の黒ずんだ緑を包み、またそのきれめに雑木林の禍色が見えかくれする。まことにわび・しい丹波の秋ではあるが、そこにはすつかりあきを終った牒村の安らぎが感じられた。山同の晩秋をおもう花。花材は「からす瓜、けいとう」てかけ花とした。花沿は「へちま篭」といつて、秋も深い十月のすえに亡くなった私の.. 2種を篭に入れ父の遺愛のかけ篭である。からす瓜はまだ色づくのには早いが、緑の中に少し黄ばんだものを取合わせて、竹の小枝にかけて左石に垂れるがままに形をととのえた。山国のあの冷雨の中の竹林には、からす瓜が色づいてさえざえとした紅を見せていることであろう。残りのけいとうは花色も美しく、緑の葉が目にしみる様に美しい。この二種の材料で山村の聞紹を出そうと考えたのだが、少し美しすぎるかも知れない。索朴な野趣、な感じがもつと出ていたのがよかつたかとも息う。ただ、梨色そのままの感じにならない様にと考えた。そん7 晩秋の丹波山国村

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