テキスト1968
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写真宗京都六条東本願寺の表門から南方をみると、この写真の様に「京都タワー」が見える。本願寺の壮麗な大伽藍とついじ塀の向うに、少し離れて見える巨大な円柱塔、伝統と現代の対照的な風景である。真宗大谷派の本山であるこの東本願寺は、慶長七年第十一世教如上人によって創立され、現在の堂宇は明治28年の落成で京都の寺院としては比較的新しい建造物である。附近に京都駅があって機能的な地区と、教の本拠とが隣り合せて共存しているのも、このごろの京都を象徴しているともいえる。伝統建築と現代建築の対照を皮肉にもとらえたこの写真は、その二つの中に調和して行かねばならぬ京都市の脳みを象徴している様である。△ 立花(りつか)や仕花は数百年の歴史と技術をもつているのだが、現在それを作る場合には、今日の花材を選び、今日の花器を選ぶ。材料として洋花を使うことも多く、和草木との感じ色彩の謁和を考えて、しつくりととけ合うことを考える。仏統的な立花と、今日の立花の迩う点でもある。「本顧寺と京都タワー」の写真をみて、伝統的な形式の中へ洋花を挿し入れようとする今日の立花と、どこかに一致点がある様に息えるので、この「洋花をまじえた立花」を作って対照してみた。ことに本顧寿と立花とは深い関係にある。本格的な立花を仏前に供え、書院に飾り花としているのは各宗の寺院の中で、恐らく本顧寺だけであろう。そんな点においても本顧寺と立花、というよりは立花師にとつては因縁汲からぬものがある。さて、この写真は(若松、白椿、水仙)の後方の真に、グラジオラスの紫紅色の花を利く登らせて挿した。花瓶は古銅の立花瓶で竜文党の作。緑の若松の後方へ花を沈めて挿したグラジオラスは色彩も美しく、派手な色を松の緑でしつくりと押えている。水仙に技巧をつけて立花らしい調子を出したが、この立花は荘重と明快という二つの反した必じの中に「反対の潤」ともいえる、融合を求めた作品、ということになる。むづかしい説明だが、本願寺と京都タワーの風景と、この立花と、どこかに共通点があると息うのだが、如何でしようか。6 ~--・..良ふ' 本願寺と京都タワー挿花と文桑原専渓小西進京都といけばな③ ー、ヽ...

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