テキスト1968
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京都ところどころを写真にして、その感じをいけばなで表視しようという「意匠花」ともいえる作品です。すつきりと上品で、いけばなの線をくずさない、そんな意匠的な作品を考えて作りました。(挿花と文・桑原専涙)(写真・小西進)大丸ビラは、故下村正太郎氏の邸宅として昭和七年築された。京都御所の西南隅の烏丸通にあるこの大丸ビラは、はじめ「下村ハウス」と名づけられて、京都にある洋風建造物の中でも、特に有名である。下村ハウスは古いイギリス風の建築様式で、チウダー時代(-五五0年代)のハーフチンバー様式によるものといわれ、このチウダー時代(十六批紀後期)の建築様式は、文豪シェークスビヤのハムレットなどの劇や映画で見ることの出来る様式である。京都御所に面したこの大丸ビラ(ビラは別荘の意)は、附近の環楼によく調和して、伝統的な京都の町(-九三一)に建並みに落貯きのある俊雅さを見せている。春より秋へかけて、煉瓦と不と混成された外塀に、つるばらの花が咲き、樅や樟の大樹を通して、重厚な古城の建築に倣った、ハーフチンバー様式の典雅なたてものの稜角が見える。野普薇(のばら)の実つきのもの3本、淡黄の露地バラ3本で瓶花を作った。花器はかなり年代の古いイギリス製のラン。フの油壷である。さびた金色の油壺は、装飾の笠う花材ギ,1 ら野翠門微けの金具がついており、それも装飾の一部としてそのまま使って見た。イギリスの古い時代の奎内装飾としての夢を、このいけばなにあらわして見ようと考えたのだが、大丸ビラの外塀に咲くつるばらのイメージも、織り込んだつもりである。渋い光沢のある金具とバラの感じがよく調和しているが、左右にのびた野密薇の枝は、塀にかかったツルバラの感じを出そうと考えた次第である。少し朱に色づいた野翠翌微の尖と、淡黄のバラの花、濃緑の葉色が美しく、花器の古典的な悩じと調和して、落府きのある味わいを見せている。6 京都といけばな②.... 京都烏丸丸太町大丸ビフ

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