テキスト1968
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いけばな展出品が決定すると、会場の広さ、自分の作品を償く場所の広さなどを考えて、出品作の大きさをきめるのだから、その作品を成功させるためには、どの程度の大きさが必要であるかを考える。まず、それを決めいよいよJ作にとりかかることになるのだが、その前に作ってある「原叩図而」によって、試作の小品を作ることにする。実際作品の10分の1の寸法を割りいけばな作家の構想はすでに定つている専渓10分の1の大きさに、試験的な作品38年5月専渓作大阪松坂屋百人展出品出し、高さ、はば、奥行などすべてを作ることになる。この試作の時問は重要な時間であつて、それが成功するか否かは、この研究試作のうちにきまることになるのだから、幾度となく試作品を作り、幾度となくとりこわして研究を屯ねる。二、三日でおわることもあるし、一週間にも及ぶことがある,勿論、この試作品を作る前の相wー長期にわたって、構想を錬つて米たのであるが、心にあるものと、実際に立体造形の現実的なものとは、必ずしも同じことにならないから、試作の段階において検討に検討を菫ねて、或は予定の変更もあり、計算の誤りもこの段階で発見することになる。テストの小作品をつくるために、祥血材料店で彫刻用の油土(ゆど)を買う。これはねんどと油とをねり合せたもので、形を作るのに便利であるし、保存がきく。この油土で、実際作品の10分の1の容積の試作品を作ることになる。さて、皆さんもすでにご承知の様に、私逹の作る造形は、いけばなの範囲を越えて、いけばなのすべての形式・系材からはなれて、広い分野の造形をすることになるのだから、この場合の材料は、植物にとらわれる必要はなく、金属、土石、木材の様な系材をもつて新しい造形をする。この段階では、いけばなではなく、ただ、花迅家の作る創作造形であるということを忘れない様にして欲しい。そうでないと作品の意識が混雑して中途半端なものになりやすいので、特に注意して欲しいと思う。次に考えることは、造形する索材がなんであるかということである。土石木材などをもつて彫刻するのか、金属熔接の方法もあり、自然の木を組み立てて作品にするのか、種々な索材があり、これは作者の考え方によって選択がわかれるのだが、例えば、私の最近の作品はセメントを凝固させて作る作品が多く、それとまた自然木の材料を使って作る造形もある。ここに掲叔した作品は数年以前のる、竹片、そでつの実)などの自然作品なのだが、材料は植物の材料と、古い鉄片を組み合せて、形を作っている。「海渕」はコンクリートで仕上げ、その土に若色をほどこしてある。さて、油土で作った試験作品は高さ柚巾ともに(カネ8寸)、寸)程度の小品で、実際作品はこれがすべて10倍大になるのだから、かなり大作になる予定である。この試作小品を作る問に、よく研究検討して小さい部分に至るまで、精密に形を作り上げる。これが出来上ると、いよいよ実際の制作に入る。まず必要な場所である、これには必要な条件がある。が必要であって、れて見ることのできる場所。のよい楊所こんないろいろな点を考えて場所をきめる。私の場合は、京都市内の寂光寺の中に定った制作の場があり、そこで作ることにしているのだが、そこへ材料を持ち込み、助手の男性の人5人がかりで約10日間ほど紺日つづけて作品にとりかかる。最初に鉄骨で原型を作らせ(熔接)次に木材で原型を作って行く。原型が仕上ったらラス(鉄鋼)張りであ3U321(へご、藤づ(奥行6会場と同じ程度の広さの場所作品を遠く離トラックヘ積み込むのに便利仕事のしやすい場所。る。この段附になると高さ2メークー以土の骨組みになり、横はば奥行が、ようやくはつきりとわかる様にともに2メーターほどの大作の憾じなる。最初に考えた試作の型と、実際10倍大のものとは必ずしも同じではなく、この段階において、よく考え検討して訂正して誤鍔のない様に考えつつ仕上げて行く。この辺が一ばん大切なときで、コンクリートをつける段階になると訂正はできにくい。したがつて、最初の希求する作品の目的もこの段階で決定して来る大切な時閤である。三日間程度で原型が仕上り、いよいよコンクリートをつけることになる。この塗り方にもいろいろ方法があって、コンクリートに混合する材料にも工夫がいるものである。ほども塗り重ね、段々と作品の最後の段階へ入っ行く。精密に計鍔しながら、工程のタッチは力強く、小部分に抱泥することなく、全体をしつかり掴んで勢いのよい手法をもつて作って行く。この間はたえず反省と、結果への見とおしの連続である、一切の小細工をしない様に、大きく見つめて、頑と身体のあらん限りを使って粘力との闘いである。いよいよ仕上ると沼色にうつる。この作品は造形の中に絵画的な色彩を加える目的であるから、地の色から最後の色まで、何回となく色を重ねて、最後の完fへ持つて行くつ4回立体造形③9A 10 ...

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