テキスト1968
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花器をのせる花台(かだい)薄板(うすいた)の種類がいろいろある。それについて考えてみよう。昔から、花器は必ず花台または薄板その他の(敷もの)にのせて床の問その他の場所に飾ることになつている。床の間には畳床、板床など、また迩い棚、その下の板の場所(地板という)或は書院窓に花を飾ることもあり、それ以外の場所にも飾ることがあるが、昔からの習慣として、畳の上には花台又は薄板の類を使い、書院窓、板床の様に板の場所へは直齢、にすることとなつている花を活けた花器には(しめり)があるから、畳をいためない様に台、しきものを使うのだが、また装飾としても―つの役目をもつており、花、花器、台の三つによっていけ花が作られる、というのが伝統的な考え方である。今日の私達の生活様式から考えてみると、この伝統の考え方をそのままというのは、どうにも不自花台としきもの(じかおき)由なことも多いし、室内装飾の様子も変つて来ていることでもあり、ことに、花器のしきもの又は台に使う器具の稲類にも大きい変化をきたしておることだから、古い考え方をそのまま守るということ自体、矛盾を感じることが多い。古い形式の花台(したん、漆器、木地)の類にいけばなを飾つても、今日のいけばなは調和しないし、もつともつと新しい形や、新しい材料で作られた種類のものがあるからそんな近代的なもち味のあるものを広い範囲から選択したい。床の間を飾る場合にも、形式にとらわれることなく、かけ軸をかけてそれで装飾が十分だと思うときは、花を添える必要もなく、他の場所に飾ればよいし、第一、かけ軸そのものが、新しい書画となり、額装など新しい様式となつており、また、いけばなの花瓶も新しい調子のもの、花の材料も洋花などを交えて、すつかり感じが変つて来ているから、当然、昔のままの花台うす板の観念からはなれる必要がある。数年以前のことだったが、芦屋のあるお宅で、茶席に東郷青児の淡彩の絵を額装して、床の間に飾つてあったが、よく調和して楽しいふんいきでお茶を頂戴したが、いけばなもこんな調子で、たとえ床の間といえども、上品な感じの中に新鮮な感じを盛るようにしたいものである。今日は七月十六日、京都は祇園祭の宵山の日なので、私の家でもいささか座敷の装飾をかえた。床に亀井玄氏の朱竹の屈を額に入れたもの、畳床の中央に、フランス製の小卓を飾りつけた。(褐色塗装、金色かなぐの装飾あり)花は透明ガラス花瓶に、姫百合2本を挿した。床の絵の朱色に対して、姫百合の朱色、みどりの葉、中々よい調和である。なんとなく明るい感じがあり、しかもしつくり床に調和している。(卓は大阪和光にて)台も、板も、装飾用具として新しい感覚のものがあるから、それをよく選んで使うと、台、必ずしも古い感じとはいえないことになる。低い台や、薄板様式のものも最近新しいデザインのものが作られており、私達の新しいいけばなを引き立てる用具がいろいろある。ビニール製品の中にも新しい意匠の美しいものもあり、木工品の中にも新様式のしやれた味わいのものも見つけられる。勿論、花瓶を置くための花台の類やうす板の類でなくとも、一寸した応用の考え方によっては利用できるものが多い。ことに、いけばなは床の間に飾るだけではなく、あらゆる室内の場所へ飾ることを考えれば、しきものの利用もひろく考えつくに違いない。更に、いけばなには台やうす板やその他のしきものを使う場合もあり、用いない場合も多い。花瓶にしきものを使うという考え方自体が、すでに古い形式なので、必ずしも台にのせ敷きものにのせる必要はない訳で、花瓶だけ置く方が装飾としても美しいし、あつさりした感じで好ましい。しかし、花器の湿気によって置く場所をいためる心配もあり、そのために台やしきものを用いる訳であるから、この場合は必要具であり、いささか煩わしい場合でも、花台や板のすつきりとした意匠のものを選んで使うようにしたい。伝統のうす板の中で、黒塗の蛤板(はまぐりいた)は一ばん花器との調和もよく、和室には調和のよいものである。には、レースその他の布地のしきものが調和よく、洗いのきくものが使いやすい。あげるために用いるものでもあるから、いつも花の引立つ様に考えて選択することが大切である。装飾的実用品ということができる。瓶敷(びんしき)を買った。麦秤製の手芸品で、形もよく色もさびた青色、紅色、紫色などを組み合せて、しかも堅牢である。花瓶を置いてみると中々調和よく、花とのうつりもよい。値段も安くて(ニ傾向の簡単なものでも、使う人の考え方で活きるものだと思っ゜ニヤ板の様な高級品がある、あんなものの中から嫌味のない感じのものを選んで、適当の大きさに切らせて使うのも面白い。色の種類もあって手ぎれいな感じのものが多い。いずれの場合も、上品な感じで見られるもの、また、形の単純な四角型、丸型、長方型などのほうが花瓶や花との調和がよいと思00円程度)趣味もよく、こんなテレビの上、テーブルの上などしきものはいけ花の装飾効果を先日、横浜の南京町で中国製の最近、新建材といわれているべう。(専)311

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