テキスト1968
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、'•^/’ f`10時前か、開店後の六時以後という第2ウインドウとか番号がついてい花を活ける場合に、あそこはどうも活けにくい、という様な場所はあまりないのだが、私の永い経験のうちで、こんな場合もある、というお話をしてみよう。その―つは百貨店のウインドウのいけばなである。この場合、開店中にはウインドウに出入りすることはできないので、どうしても開店前のことになる。例えば京都大丸のウインドウ、四条通に面したあの大きなウインドウである。第1ウインドウるらしいが、とにかく私は幾度となくあのウインドウに花を活けたことがある。もちろん、閉店後にウインドウカーテンをおろして仕事をする訳なのだが、四帖半ほどの広さの陳列室に入ってガラスを背中にして花を活けることになるのだが、この場合に一ばん必要なことは、街路から見てそのいけばながどんなに見えるかということである。いけばなの作品の一ばん前とガラスとの間は、普通は2尺程lしかアキがない。そこへ身体をもっていつて活けることになるのだから、ウインドウの中ではどうにか巧く活けても、さて舗道に立つてウインドウの花を見る活ける場所.. る。場合に、よい調子に入っているやらどんなやら、さつばりわからない。かなり大きい作品だから、最小2メーター程度まで後へ下つて見なければ、花の状態がわからないのだが、街路へ出るのが中々大変なのであご承知のように百貨店は閉店時間に表口をしめると、翌朝まではドアの開閉をしないことになつている。ウインドウのガラス一枚が街路であるのに、そこへおり立つには、店内を通り抜けて店員入ロへ廻り、横通りから店を一とまわりして、正面ゥインドウの前まで行くのには、距離にして約四00メーターはある。したがつて、自分の活けた花がどんな調子なのか、枝が高いのか低いのか、すきがあるのか茂りすぎているのか、これはどうしても街路に立つて見る人達の位置からでないと、正しい判断ができにくい。これは実に厄介なところだなと思いながらほぽ見当をつけて仕上げることになるのだが、段々これにも慣れてくると、いろいろ工夫を考えることになり、まず、助手の仕事のよくできる人を中へ入れて置き、自分は街路へおりて、「その枝を下げる」「その枝は右向ける」「花を沈めて」「花を一本加える」などと注文する様になったが、これがまた大変で、なにしろガラスが分厚いので言葉は全然\ーんA B Rアリ七月より八月へかけてのいけ花材料はキキョウ、オミナェシ、シマガヤ、ダンススキ、タメトモユリ、オニュリ、シラボシカユウ、ダリア、グラジオラス、スイレン、カスミソウなどの草花にユキヤナギの緑の葉、マンサク、ナナカマドなどの山木の枝振りの軽やかなものを選んで、たっぷりとした緑の中に淡泊な花の色を交える様にする。料い折柄であるから、なるべく分量も少くあつさりと仕上げるのがよい。花器は白地の陶器、ガラス器、篭花器などが好ましい。Rホザキナナカマド、シマガヤ、キキョウ三種の瓶花である。ナナカマドは一般には珍至梅(チンシバイ)といわれている高山植物である。この自然趣味の三種は環境もよくあっているし、季節感もあり色も美しい。花器は褐色あめぐすりの壷で、中に剣山を入れそれに挿してある。足もとをすかせる様に作り、清爽な感じを出す様に考えた。夏草の花らしい感覚があると息う。アム、アジサイの二種瓶花。まつ白な壷に活けたこの瓶花は、白地の浴衣の様なすがすがしさがあ\瓶花3作ホザキ4 爵咄> ‘‘,‘そ、1“

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