テキスト1968
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R褐色のドイツ種いちはつは花の大きである。花というよりは動物的な感じがする形である。花軸も太く葉もた<ましい。写真のものはすでに花季の終りの枯れがれとした感じだが、色が洋花らしい変った褐色である。これにグラジオラスの赤の開花の、これも強い色をあしらったのだが、ニつの花は、色調も変つているし、その強い憾じに特徴のある配合である。褐色(少し紫がかった)のアイリス(いちはつ、あやめの類はすべてアイリス)を二本直立させて、葉を前にあしらい、その右方少し前へ傾けてグラジオラスの赤を重ねた。紫褐色と赤紅の色の重なりがエキゾチックな華麗さを見せている。白い花器の口もとに低くグラジオラスの赤を前方へ低くさしさ15センチほど、どつしりと力強い花出してある。右方にグラジオラスの細いつぼみの茎を添えたが、この茎は軽い直線を見せて足もとから登るその空間が技巧的に美しい花型を作っている。全体が弛いので、どこかに軽いアクセントをつけると、よい花型となる。白黒の写真では、感じがわからないが、主として色彩の上で異色のある盛花といえる。外国の花には、この様な強い感覚の花が多く、日本のしずかな花とは全く対照的な味わいをもつている。アリアムの大きい花頭(直径15センチもある)ダリアの大輪咲(酉径20センチもある)。時々こんな花材を見るが、それを活けるとき、その強烈さの中に異風な感覚をよく掴んで、その味わいを活かすいけばなを作りたいものである。⑧やまなしはその樹枝が梨の肌に似ているのでこの名がある。白緑の若葉は初豆の瓶花に好ましい材料である。写真の賎花はやまなし、かきっばた、あじさい(洋種ハイトランヂヤ)の三種で、黒緑の大きい壺に入れた。かきつばたを中間に立てて、少し前傾き、やまなしは右前斜に傾斜させ、その中央の枝はかきつばたの葉の前に重ねて、緑の色階を見せ五月の花、新鮮な五月の花手にふれる新しい夏の感触R ている。これに対してあじさいの白11き、花器の口辺より垂れる様に挿花を二本、これは前方左方に花頭をして、立つかきつばた、横へ張るやまなし、垂れるハイトランヂヤ、三る。色彩的には緑を主にした配合で、紫のかきつばたの一輪が色のポイントである。五月に入るとなんとなく昂さを感じられるので、いけばなにもこんなさつばりとした取合せが好ましいと息う。つの形の集成ともいえる瓶花であ年R ドイツイチハツグラジオラスヤマナシカキッパタアジサイ10

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