テキスト1968
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桑原専慶流ぶ、はよく似た花で季節はいずれも春の終りより初夏にかけて咲く。「いずれがあやめかきつばた」といわれる様に誤られやすいのだが、この三種は「あやめ科」に属する花で、洋名ではアイリスの種属である。その他に「白菖」ーはくしようーというのがある。五月の節句に「尚武」に名をちなんで供え花にしたり、しよ花はな菖しよ蒲うぶあやめ、かきつばた、はなしよう桑原専渓うぶ湯に使うのは、この白菖である。いけばなに活けるしようぶは「はなしようぶ」といった方がよく、かきつばたの終る頃より、池沼に咲き、また池辺田圃にも栽培される、いわゆる水陸両性の花である。かきつばたの俊婉な姿に対して、はなしようぶは雄駿な感じがあり、いけばなにもその個性の見える様に、はなしようぶは背高く勢いのよい姿に活ける。かきつばたは花低く活け、葉も温雅な形に活け、しようぶは、葉も長くするどく作る。生花の場合も瓶花盛花の場合も同じ心である。ヽ95`!I.I かきつばたの花は紫と白がほとんどで品種が一定しているのに対し、しようぶは多数の花色が咲き、花辮(かべん)も三べんのもの、五、七、九辮など、て、まことに華やかである。しようぶが咲きはじめると、いよいよ夏である。がしい新緑の美しさを活けたいものである。紫菖蒲に雪柳の青葉、青楓などあしらった瓶花盛花、初花のすいれんを加えて、三種の盛花など季節感の深い配合である。かきつばた、はなしようぶはいずれも一種挿に活けると清爽とした趣味の花が出来る。生花にもあまり小多い花べんの種類があっいけばなにもすがす細工のないさっぱりとした花形が好ましい。草花をあしらう場合には、姫百合、ささ百合、早咲きのききよう、あざみ、なるこゆりの葉など、和種の雅趣のある材料が好ましい。つつじの若葉、さんきらいの若葉、はぜ、ほうの木など新緑の葉ものは調和よく、太曲(ふとい)との取合せは俗っぽく感心しない。掲載した花菖蒲、バラの瓶花は、安定感のある花器に対して、のびやかにすらりとした感じに入っていると思っ。バラの葉の光沢と菖蒲の花葉の直線の形、この二つが初夏の爽やかさを作り出しているのではなかろうか。うす紫の菖蒲、淡黄に少し紅をおびたバラ2輪の瓶花。花器は赤褐色の荒土の手附花瓶。五月より六月へかけての初夏を象徴するすがすがしい感じの花である。菖蒲は中央に高く1本、その前へ傾けて1本を入れその左右にバラ2本長短をとつて挿した。淡泊な色調が美しい。この瓶花は前方へ傾けて挿した菖蒲の葉に特徴がある。濃緑の葉に重ねてゆるやかな曲線の菖蒲の葉、悠りとして明るい感じを出している。花器のロ辺に見をる株もとにも技巧がある。花菖蒲ばらバラのいけばな//i! ”疇J/、:、9\‘ 毎月1回発行編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元No. 61 ._,, 1968年5月発行

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