テキスト1968
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さくら、つばきなどの木の花が終ると春もすえ、晩春の季節である。四月の下旬までおそ咲きの桜、椿の珍らしい種類の花も咲きつづけるのだが、からすもくれん、すおおの木など、若葉の中に交つて浪い紫赤の花を見る季節である。いけばな材料にもつつじ、こでま草花の四月りの様なかんぼくの花を活けることが多くなる。山梨の白緑の葉、さんざしの黄みどりの葉の様な枝ものを使う様になり、春の花材から初夏の花材へとうつり変つて行く。うり葉もみぢの緑、山つつじ、りゆうきう、たまやなどのつつじの季節となり、草花には、かきつばた、都忘れ(野菊)チューリッ。フ、バラ、ラッ。ハ水仙、スイトビー、洋蘭の類、カユウなどま',I うり葉もみぢに黒柳を配合する温室をはなれて、茎も花もしつかりと色を増し、りようらんとした豊かな花のシーズンとなる。こでまりに野菊、すかしゆり、ばらなどをつける配合は普通の考え方であって、その他、木もののあしらいに草花という場合が多いのだが、四季を通じて木ものに草花をつける配合は、殆どのいけばしやが、むぎの緑、なの一般的な考え方である。勿論、これもいいには辿いないが、例え八遁桜に若松の二稲挿からす木蓮にむぎをあしらう八屯桜にうり葉もみじの様な配合も新鮮な味わいがあっていいものである。かきつばたは一種挿に活けるといいものだが、配合する場合には、うり葉もみじ、白つつじ、こでまりなど、かんぼくの花をあしらうのも、案外、調和のよい花ができる。また、草花だけを二種三種ととり合わせるのもよい。(紅バラ、野菊)(紅バラ、バイモ)(スカシュリ、野菊)(ムギ、バラ)(スイトビー、ナタネ)(姫百合、菊)(姫百^11、野菊)(ムギ、チューリツ。フ)(ナタネ、野約)(スカシュリ、野菊)(黄バラ、チューリッ。フ)の様に、低い草花やバラの様なかんぼくの花をあしらって、活けるのも軽ゃ力にすがすがしく、感じのよいものである。普通、根じめに使う様な花を、二種とり合せて盛花瓶花を作る。この考え方は、この頃の季節には殊に感じのよい作品がつくれるものである。ここに掲げた写真、むぎ、スイトビー、なたねの三種の盛花が、それにあたるものだが、この場合、スイトビーとむぎ二種でもよいし、スイトビー、なたねの二種でも一般的な配合だが軽やかで美しい。要は、常識的なきまった様な取合せをしないこと。そして、その中に必要なことは、花材のもつ慇帖をよく汲みとつて、季節の情趣をあらわす様に考えることである。この写真の色調は紺色の鉢に、むぎの緑、なたねの黄緑、スイトビーのピンクの花の三秤なのだが、春の自然と季節咸心をよくあらわしているし、緑の位が多いこと、うきたつ様なスイトビーの淡紅色を計鍔して配合してある。花色のあまり多いのは美しく息えるが、花を引き立てる方法ではなく、緑の葉を多く使うほど品格もよく、新鮮に見える方法である。楽な気持でゆったりとした花を活ける。そして、花葉のすえまで心の行きとどいた花を活けることが、なにより大切である。毎月1回発行桑原専慶流No. 60 編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専艇流家元1968年4月発行いけばな

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