テキスト1968
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赤□3灯常の笠石を息わせる様なこの花器、仁松作の黄土四角形の鉢である。荒土のざらざらとした陶器の肌に自然の野趣を感じさせる。紅葉の寒菊を自然のままの感じに挿して、なんとなく季節感を息わせる様な、ざんぐりとした盛花を作った。北止のこの辺りは紅葉と南天うめもどきの名所であり、鷹が峯は寒菊の名所といわれる。いずれも初冬の風雅をかざる名蹟の土地である。京都は東山にそうて名所が多い。清水寺、知恩院、青辿院、北白川、一乗寺詩仙堂、修学院離宮、その北辺、比畝山の山すそに赤山明神(せきざんみようじん)がある。一般には有名ではないが、天合宗の守護神として仁和四年、延麻寺の座主安慧の創始による神社である。ここは京都東山の紅葉の名所であつて、ここの楓は京都では一ばこ。t ん紅葉が美しい、といわれているのだが、訪れる人も少なく、まことは寂蓼であり、名所としては珍らしく静かなところである。初冬のこの日、すつかり落ちつくした楓林には、枯葉をた<老夫婦の姿がわびしく見えるのみ。午後の斜似が楓樹の木だちと参迫の灯箆を、シルエットに拙き出してまことに寒々とした風景であっきのうの稔古日に隆吉氏が「うめもどき」の生花をこの花器に活けた。実のほとんど少ない材料であったが、木振りも而白く花刑も風雅で変化がある。水ぎわをみると、この写真の「赤山楓樹」の感じに通じるものがあるので、まことに失礼ながら、その足もとだけを拝借して写真にとった。絵としてまことに面白い構図であり、上の二つの写真と組み合せて、この。ヘージを飾ることとする山神社ざんじんじゃ10

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