テキスト1968
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c仏手柑(ぶしゆかん)、寒菊の紅葉二種の瓶花。ぶしゆかんは暖国に栽培される潅木で、柑橘類の中でも形も面白いものである。鑑賞用に鉢植に栽培されることが多く、実は砂糖漬にして食用にされる。京都では鉢植のものしか見られないが、いずれにしても背高く成長するものではない。果実は柚に似て大きく人の手をつぽめた様な形なのでこの名がある。「仏手柑や土を去ること遠からず」という句がある様に、背の低い木に大きい実が重たげにさがつて、とまで実が下がつているので、こんな旬があるのだろう。とに角、珍らしい材料なので「テキスト」の参考資料としては不適当かと思ったが、折角みつけた材料なので、重い実ものを活ける場合の参考として掲載することにした。に挿して、仏手柑を下に垂れさせて変った調子の瓶花を作ったが、これ折から出はじめた寒菊の紅葉を上は「文人花」ともいえる雅趣の瓶花株もとなった。古い瓶花の形式の中に、文人花(ぶんじんばな)という言葉があるが、これは原稲をあらたにして解説したいと思っている。⑪なた豆、山菊(さんぎく)二種の瓶花である。こんな形の瓶花を「垂体」すいたい、という。反の実ものですでに終りがたの材料なのだが、なた豆としては形も小c c⑪ さく、つる付の形も面白いので白花のさんぎくと取合せて活けた。背の高い花器を選んで、亜のさがるままに垂れさせて、上部に山菊をたっぷりと入れた。上の作品、寒菊と仏手柑の瓶花とよく似た花型となったが、この白山菊は特にたっぷりと入れ、根じめというよりは、山菊のほうが主材と思われるほど形も大きく、厚味のある形に作ってあるのが変った調子といえる。なた豆のつるは左(副)前方(胴)右方(留)の三ところに挿し、右方の豆はずつと下げて床面に定若している。この花器も変った花器である。黒色陶器で、方形と円形とを組み合せて、段々と重ねた様な形で、中々面白い形なのだが、これで重最がしつかりとあり、重たい花材を入れるのに適した花器である。この瓶花で私の気に入ったのは山菊の入れ方である。こんなたっぷりとした使い方は、テキスト写真の中で今度がはじめてだと思う。5 寒菊仏手柑なたまめ山菊D

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