テキスト1967
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c雪柳の緑の葉。枝振りのさびた変化のあるものを左右に配置し、右の下部へ低くさげて調子を変えた。カシワゴムの大葉を前へ傾けるもの、後方へ出るものと2枚。その中間に、渋い紫紅色の花(トウウチソウ)を高めに挿し、花の垂れた形を前後に配凶し、左右へもひろげて、全体が自然風な自由な調子に入れた。黒色の陶器に活けたこの瓶花は、色彩的にも変った感じの作品で、花形も大らかなのびのびとした調子にできている。珍らしい材料の取合せにぴったりとする形である。c ⑪蛍箱を花器に利用して、上下の二段に花を入れた。ユーカリとすかしゆり、あじさいの三種の花。生花の二管筒と同じ考え方の配置である。器の中へ小さいガラス鉢を入れて剣山でとめてある。上下の花器に左勝手右勝手という様に入れると、あまりにも形式的になるので、ユーカリを左右にひろげて楽な自由な調子に抑した。台所用品を使った盛花である。降りつづく雨にたたかれて、庭に咲いた花も、すつかり肩をおとしてあわれな姿である。花も葉もすつかり水びたしになってだらりとした姿である。こんな状態の花を切りとつて活けても水揚が悪いものである。雨があがつて日ざしをうけ、立ちなおった後でないと、花の色も回復しないし、水揚も悪い。あれほど水分をうけた花だから水揚もよかろうと思うのは問違いで、植物には水分過多でもいけないし、日光によって回復するのだから、とにかく雨中の花は日持ちも悪いし水揚も悪い。これと反対に、ひでりが続くと花葉の色があせ、花も小さく貧弱な花しか咲かない。水揚もよくない。植物には適度の水分と日光が必要であることは当然である。花を活ける人達が殆んど花屋で材料を買つのだが、以上の様なことも頭に入れて、雨つづきの材料は日もちも悪く姿も悪いし、ひでりつづきの場合もよい花が少なくなる。ーーこれは挿花人の常織として、知つておく必要がある。花を栽培する人達はいつもそんなことを考えているわけで、雨にぬれた花は切らない様にする。雨後のひざしをうけて、かわいた花を切つて市場へ般出するのである。雨にぬれた花は日持ちが悪い3 応用花器D

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